小田急複々線化1年、狙い通りの成果はあったか

顕著な乗客増が見られた区間はあるが…

また、所要時間の短縮では、通勤客の遠近分離を図るため、朝間の急行を停車駅のより少ない快速急行に格上げして大幅に増やした。小田原線系統が10分間隔、江ノ島線からも10分間隔で、もはや新宿には急行は現れない。そのため新たに登戸を停車駅に加えて通勤準急や各駅停車に接続することで、以前の急行停車駅への利便を確保した。この快速急行化により町田―新宿間は最大12分短縮され、最短所要時間は37分となった。登戸―新宿間18分という所要時間は日中と大差ない。JR横浜線沿線で町田と同等のエリアから山手線までを結ぶ京王相模原線(橋本)や東急田園都市線(長津田)との比較で最も速い、劇的な短縮である。多摩線からは以前の千代田線直通の急行に代えて新宿行き通勤急行を新設し、小田急多摩センター始発も設定した。こちらは小田急多摩センター―新宿間を最大14分短縮し、所要40分とした。

では、その結果は――。快速急行の速達性が高まったため利用が集中し、途中駅(通過駅)で混雑が増すことはなくなったものの、以前の急行に比べて混雑率の低下が実感されることもなかった。確かに準急系統や各駅停車を含めた平均混雑率では151%に下がったとされるが、遠距離通勤客がそれらにシフトすることはなく、逆に不満のタネとなってしまったようだ。

快速急行の混雑緩和対策

ただし、複線時代はまったく余裕のない稠密ダイヤのため平日朝ピーク1時間(下北沢着8時前後の1時間)の遅延の平均時分が2分4秒だったところ、回復性が高まって48秒に減少しており、ノロノロ運転の解消、速達性向上とともに定時率も大幅に向上している。

経堂駅は島式2面4線に加えて上り急行線は通過線を併せ持つ(撮影:山下大祐)

このため小田急では、多摩線からの通勤急行がほぼ同様の速達性を有する(向ヶ丘遊園・成城学園前停車。登戸通過)列車であるとアピールし、誘導を図った。結果、当初はアンバランスだった快速急行と通勤急行の混雑率はほぼ均衡し、快速急行の混雑はやや緩和された。それでも快速急行の最混雑時をざっくり観察すると、座席は埋まり、ドア間の通路も8人×3列ぐらいの人でびっしり、ドア付近の空間はより密集している状況だ。

現在は引き続き、向ヶ丘遊園以西が各駅停車である通勤準急や、向ヶ丘遊園始発の各停の利用を呼びかけている。通勤準急利用の場合、千代田線直通のため新宿へは代々木上原での乗り換えが伴うが着席できる可能性もあり、接続する快速急行の代々木上原―新宿間も千代田線へ向かう乗客が乗り換えた後なので激しい混雑は回避され、所要時間は数分しか違わない。果たして効果が出るかどうかは「朝の5分」や乗り換えの煩わしさを利用者がどう判断するか、ということにかかってくる。

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