小田急複々線化1年、狙い通りの成果はあったか 顕著な乗客増が見られた区間はあるが…

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朝ラッシュの上りダイヤでは緩行線を走る千代田線直通の通勤準急を急行線運転の新宿行き快速急行が軽快に追い抜いていく(狛江―和泉多摩川間、撮影:山下大祐)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2019年5月号「好評?不評?小田急複々線化一周年」を再構成した記事を掲載します。

小田急電鉄が半世紀をかけて進めてきた、社内では「夢」とさえ言われた複々線化事業が計画の全区間で達成されたのは2017年度末。そもそも、営団地下鉄(現・東京メトロ)千代田線の全通とあわせて代々木上原―東北沢間わずか1駅0.7kmが完成したのは1978年3月だったが、その後は数々の難題から年月を要し、1997年6月に喜多見―和泉多摩川間2.4km、2004年11月に世田谷代田―喜多見間6.4kmが完成した。そして最大の難関として残されていた、下北沢駅界隈を含む東北沢―世田谷代田間1.6kmの地下区間が完成し、2018年3月17日のダイヤ改正でダイヤを抜本的に改めたのである。

この刷新を、小田急電鉄は2016年の春から前面にアピールし、数々の改善によって改正3年後には50億円プラスアルファの増収を目指すとの収支計画も披露されている。

その2018年3月改正から1年、利用者は恩恵を感じているのか、小田急電鉄は狙いどおりの成果を得ているのか、様子を確かめた。

快速急行の混雑は変わらず、通勤急行に誘導

1990年ごろまで200%超と示されていた最混雑区間(世田谷代田―下北沢)ピーク1時間の平均混雑率は列車編成の増強を行ってきた結果、1990年代半ば以降は190%程度に下げることができた。しかしそこが限界で、それ以上の引き下げは複々線化を待つ以外になかった。そして、その達成によりピーク1時間の本数を改正前の27本から36本へと増やした。

小田急線は通勤圏が奥深いため、長距離の速達輸送を重視すると列車密度は急行線ばかりが高まってしまうので、通勤準急を一部区間で緩行線を走行させ、急行線との間を渡り歩く工夫に満ちた複々線の使い分けとしている。具体的には向ヶ丘遊園―成城学園前間は緩行線走行で快速急行を先行させ、成城学園前―経堂間は急行線を走行して各停を抜く。そして、経堂から代々木上原まで再び緩行線を走り、そこでまた快速急行に道を譲るなど、緻密なダイヤ構成による増発である。これらにより、平均混雑率を20位圏外に脱出する150%程度に下げることを、新ダイヤ筆頭のポイントに掲げていた。

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