小田急複々線化1年、狙い通りの成果はあったか 顕著な乗客増が見られた区間はあるが…

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昨年3月の複々線化達成により以上のように大きく変化した。それから1年を経過した本年3月16日のダイヤ改正では、以下の変更が行われる。複々線は完成形に達したため基本部分に変化の余地は少ないが、前回改正時には進行中だった工事が完成することで修正が加えられた。

まずは新宿方面複線区間の代々木八幡駅で駅改良工事が完成するのを受けて、新宿発着の各駅停車の10両運転が開始される。同駅は前後を踏切に挟まれていたため、ホーム長が8両分しかなかった。ホーム延伸のため一方の踏切を移設し、従来の相対式ホームに代えて島式ホームを設置、駅舎も橋上化する改良を行っていた。留置線の有効長や車両増備計画の関係もあり、今改正で10両編成になるのは上下計20本前後にとどまるが、今後はそれらの課題を解決しつつ10両化を進めてゆく。

また、この一部各停10両化に関連して、車両運用の関係から1本のみ8両編成で運転されていた通勤急行が10両となり、9本すべてが10両編成となる。これにより当該列車や前後の快速急行の混雑がわずかだが緩和される予定。

一方、小田原市に隣接する神奈川県開成町に所在する開成駅もホームが10両対応に延伸され(新松田―小田原間の途中駅は従来6両対応)、急行列車停車駅に昇格する。新松田―小田原間は2018年3月改正で日中の各停の運転本数が毎時4本から3本に削減されたが、開成はニュータウンとして成長が著しく、小田急線上り方向だけでなく小田原で JRに乗り換えて横浜・東京方面に向かう下り方向の需要も高い。このため、平日上下計126本、土休日同108本もの停車回数増が図られる。日中は1時間当たり3本から6本への倍増となる。現在の急行系列車は快速急行が主体になっているが、これについては新松田以南を急行に種別変更することで、開成停車とする。

イレギュラーな列車は少なめに

このほか、経堂を通過している平日夕方以降の下り急行について22時以降は停車とする。

『鉄道ジャーナル』2019年5月号(3月20日発売)。特集は「通勤電車の潮流」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

急行の経堂通過は、通勤時間帯のラッシュ主方向について近距離列車と中長距離列車の利用の分離を図るため実施されてきたが、千代田線直通列車が増えて利用が分散したことから、イレギュラーな列車はなるべく少なくする方向性で実施するもの。やはり複々線の効果だろう。世の中全般に帰宅時間が早まってきたこともある。22時以降の特急も時刻を一部変更する。

土休日の特急については需要に応じて一部列車の運転区間を変更するほか、小田原20時台の上り特急では、小田原停車の新幹線「ひかり」からの接続を考慮して、神奈川県西部の利便を高める停車駅の変更を行う。

ほかに上下二層構造の下北沢駅では、これまで始発から 6時と深夜の0時10分から終電まで急行を緩行線運転として使用ホームを限定していたが、これを改めて地下2階の急行線ホーム発着に統一する。なお、同駅では地下化により撤去された地上線の跡地で新駅舎の建設工事が進められているが、3月16日改正時から新しい改札口が設けられ、従来は狭隘(きょうあい)な通路でつながり共通改札だった京王電鉄井の頭線と改札が分離される。井の頭線の改札口は改札外の通路を挟んで向き合う。京王を含めた全体の完成は2021年。

また、東京メトロが行ってきた千代田線北綾瀬駅改良により、綾瀬―北綾瀬間への10両編成列車直通運転が可能になるため、小田急線列車の一部も北綾瀬発着となる。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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