日本が「関税フリー」な貿易を大きく広げる意味 日欧EPA、TPPなどを進め勝ち組になれるのか

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最大の課題は、TPP離脱を表明したアメリカとの関係だが、防衛問題と絡めてでも、なんとかTPPでの合意の範囲内に収めたい安倍政権のもくろみが成功するかどうかはまだ不透明だ。

現在、進行中の「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が加われば、日中韓で進めているFTAも進む可能性が高い。

日本は自由経済圏で「輸出立国」になれるのか?

FTAやEPAが締結されると、まず目につくのが輸入品の価格が安くなることだ。実際に、日欧EPAではフランスのボルドー・ワインの関税が即時撤廃され、チーズやパスタなども時間はかかるものの関税が撤廃されて、いずれは格安になるはずだ。

テレビや新聞など報道の多くは、関税撤廃や農産物などの輸入規制撤廃を受けて、国内産業が危機に陥る、といった論調一色になるのだが、実は自由貿易協定では、本当の論点は別のところにある。

なぜ安倍政権が、FTAやEPA、TPPを推進しているかと言えば、自民党の支持基盤である大手企業の世界戦略と合致するからだ。もっと簡単に言えば、日本の大手企業がつくった製品などが海外で売りやすくなることを狙ったものと言っていい。

実際に、それが自由貿易協定推進の大きなメリットと言っていいだろう。とりわけ、EPAはモノやサービスが自由化される以外にもさまざまな分野で規制が撤廃されるために、「輸出立国」である日本には有利とみているわけだ。

しかし、ここで疑問になるのが日本は本当に輸出立国なのかということだ。輸出立国としてこの先も、国際的に戦っていけるのかどうか……。

実際、日本は対外的に見ても輸出の総額は、確実に縮小していると言っていい。

国別輸出総額をランキングで見ると、日本の苦境がわかる(CIAのデータ、2017年、東洋経済オンライン、デービッド・アトキンソン「『ものづくり大国』日本の輸出が少なすぎる理由」)より)。

①中国……2兆1570億ドル(一人当たりの輸出額 1530.3ドル)
②アメリカ……1兆5760億ドル(同 4857.3ドル)
③ドイツ……1兆4010億ドル(同 1万7061.6ドル)
④日本……6833億ドル(同 5359.9ドル)
⑤韓国……5774億ドル(同1万1325.5ドル)

今や日本の輸出総額は、ドイツの半分以下、5位の韓国にはすぐ後ろに迫られている。1人当たりの輸出額では、ドイツや韓国に大きく差を広げられている。対GDPの輸出額比率では日本は世界117位、人口1人当たりの輸出額では44位になってしまう。

今や日本は輸出立国ではないかもしれない。少なくとも輸出大国ではないと言っていいだろう。

これは、数多くの企業が円高だった日本を飛び出して、海外に工場を移転したのが理由だ。つまり、日本の空洞化が原因で輸出大国でなくなったのであれば、日本政府がFTAやEPAに積極的になる意味は薄まっている。

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