日本が「関税フリー」な貿易を大きく広げる意味 日欧EPA、TPPなどを進め勝ち組になれるのか
●EPA(経済連携協定)……Economic Partnership Agreementの略。FTAをベースにした経済上の連携を強化した協定のこと。
関税撤廃に加えて、知的財産の保護や投資ルールの整備、人的交流の拡大、投資の自由化、競争政策におけるルールの整備などなど、さまざまな分野の経済的な協力体制づくりを目指す。ヒト、モノ、カネの移動の自由化、円滑化を図るのが目的だ。日本とEUが結んだ貿易協定も、このEPAになる。関税だけではなく、電子商取引などの経済ルールなども整備していくことになっている。
日本は、このEPAの推進に積極的に取り組んでおり、2002年にシンガポールと締結したのを皮切りに、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ASEAN全体、ブルネイ、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、そしてモンゴルなど、15の国や地域と提携してきた。
●TPP(環太平洋パートナーシップ)……Trans-Pacific Partnership Agreementの略。太平洋を囲む12カ国のEPAの一種で、物品の関税の撤廃や削減、サービスの貿易自由化だけにとどまらず、投資、競争、知的財産といった非関税分野のルールづくりや環境、労働など自由貿易協定すべての主要な項目をカバーしている。EPAは原則として国対国だが、一度に12カ国がそろって締結する自由貿易協定は、他に例を見ないとして話題となった。
周知のように、アメリカはトランプ大統領の誕生によってTPPから離脱し、その後日本などが中心になって、アメリカを除く11カ国の間で「TPP11(イレブン)」を結成した。
●TAG(日米物品貿易協定)……Trade Agreement on goodsの略。GATT(関税及び貿易に関する一般協定締約国団)第24条に定義されている自由貿易協定のこと。物品貿易に限定した自由貿易協定であり、サービス分野やその他の分野を含まない。
現在、日本とアメリカがこの日米物品貿易協定として交渉をスタートしているが、交渉にあたって発表された文書の中にはTAGの文字はない。日米FTAの貿易交渉であるにもかかわらず、日本政府が隠蔽しているのではないか、という指摘もある。
ちなみに、現在日本が交渉中の自由貿易交渉は複数あり、トルコと交渉中のEPAは6月にも締結されるという報道もある。さらに、日中韓とASEAN10カ国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの間で交渉中の包括的自由貿易協議「RCEP(東アジア地域包括的経済連携、Regional Comprehensive Economic Partnership)」もある。
その他には、韓国、中国、コロンビアとの間でFTAやEPAの交渉が進んでいる。
今後の日本は加速度的に自由貿易市場に参入
日本の自由貿易協定は、着実に増えつつあると思うかもしれないが、実は国際的には後れを取っている。例えば、貿易総額に占めるEPA相手国の割合を見ると、アメリカは39%、韓国は68.2% 、EUは36.2%になっている。
日本は、2013年6月に貿易額に占めるFTA相手国の割合である「FTA比率」を、当時の19%から2018年までに70%に高める目標を閣議決定した。「日本再興戦略」の一環だが、「日欧EPA」がスタートしたことで、やっと貿易額の36%に達したところだ。「TPP11」も成立した現在、今後は加速度的に日本が自由貿易市場に参入していくことになる。
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