怒りの矛先を「他人にぶつける」人のヤバい心理 恐怖と無力感が「弱者への八つ当たり」を生む
このように怒りをきちんと出せず、不満と怒りをため込む人はどこにでもいるが、これは主に恐怖、無力感、怠慢によると考えられる。
まず、自分の怒りの原因を作ったそもそもの相手に怒りをぶつけることも、交渉することもしないのは、やはり怖いからだろう。こういう恐怖を抱くのは無理もない。厚生労働省も政府も、怒りをぶつけるには大きすぎる。企業に不満を訴えて交渉したら、クビになる恐れだってある。そうなれば、年金を繰り上げ受給するしかなく、少ない年金額で経済的に困窮することへの恐怖も強いように思われる。
また、怒ったところでどうにもならないという無力感もあるはずだ。このような無力感を抱えていると、自分の怒りをきちんと伝えて、その原因を少しでも減らすようにすることはなかなかできない。さらに、別の仕事を探すのは面倒くさいという怠慢もあるのではないか。現在の職場では、必要とされているわけではないにせよ、少なくとも邪魔にはされないのだから、居続けられる限り居続けようと考えても不思議ではない。
もしかしたら、別の仕事を探したが、希望条件を満たす仕事が見つからず、仕方なく現在の職場で働き続けることにしたのかもしれない。そういう場合、自分自身の能力とキャリアを過大評価して、労働市場における自分の価値がそんなに高くないという現実を受け入れられない人ほど、不満と怒りが強くなるはずだ。
浮気性の夫に怒れない40代主婦の心理
恐怖、無力感、怠慢から、怒りを本来向けるべき相手に対して怒れない人は、どこにでもいる。例えば、知り合いの40代の専業主婦は愚痴をこぼしてばかりいて、飲食店や美容院などの店員の態度や言葉遣いに難癖をつけては怒鳴り散らす。しかも、自分が店員を怒鳴りつけたことを自慢げに話すのだが、その根底には夫への怒りが潜んでいるように見える。
夫は高学歴で高収入だが、若い頃から浮気を繰り返し、この女性が問い詰めると「食べさせてやっているんだから、文句を言うな」という言葉が返ってくるらしい。だから、夫に怒りをきちんと伝えられず、その矛先を弱い立場の店員に向け変えるしかないわけで彼女の場合も「置き換え」のメカニズムが働いている。
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