怒りの矛先を「他人にぶつける」人のヤバい心理 恐怖と無力感が「弱者への八つ当たり」を生む

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だから、派遣社員の女性に怒りをぶつけるのだろうが、このように怒りの「置き換え」によってその矛先を向けられる側はたまったものではない。そのうえ、人事担当者の話では、この男性は文書作成のスピードでも正確さでも派遣社員の女性に劣るらしく、派遣社員から「あの人は私たちよりも高い給料をもらっているくせに、仕事は遅いし、ミスばかり。そのくせ、怒鳴ってばかりいて、何とかしてください」と苦情が出ているという。

怒りの矛先が間違っている

本来この男性が怒りの矛先を向けるべき相手は厚生労働省、さらには政府だろう。60歳から年金をもらえると思っていたのに、支給開始年齢が引き上げられて、60歳を過ぎても働かなければならなくなったのだから。しかも、この男性は現在の仕事にやりがいを感じられず、「仕方なく働いている」わけで、年金政策の大本である厚生労働省や政府に怒りをぶつけるのが筋だろう。

また、文書作成の仕事をさせられていることに怒りを抱いているのなら、そういう仕事を与えた企業と交渉して、「昔取った杵柄」を生かせる仕事ができるようにするのも手である。そうすれば、現在ほど不平不満を抱かずに働けるのではないか。

あるいは、現在の仕事と待遇にそれほど不満と怒りを抱いているのなら、思い切って退職することも選択肢の1つとして考えられる。そのうえで、別の仕事を探す、あるいは年金を繰り上げ受給するという方法もある。

もちろん、60歳を過ぎているので、それほどいい条件では雇ってもらえないかもしれない。また、繰り上げ受給すれば年金受給額が減るので、究極の選択ではある。それでも、不平不満の塊になり、怒鳴り散らしながら働き続けるよりは、たとえ経済的には苦しくても、現在の状況から抜け出すほうが心身にとっていいだろう。

ちなみに、この男性は、定期健診でいつも血圧が高い。そのため、できるだけ早く内科を受診するように勧めているのだが、一向に病院に行こうとしない。ストレスのせいと言い張り、そのストレスの最大の原因は文書作成の仕事をやらされていることだと訴える。それでも、ストレスの原因を少しでも取り除くための努力をするわけでも、現状から抜け出すための選択肢を探すわけでもない。ただ、不満と怒りを募らせるばかりである。しかも、その原因とは無関係の弱い相手に怒りをぶつけるので、迷惑千万なのだ。

次ページ「不満」と「怒り」をため込んでしまう理由
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