新卒以外の"潜在能力"はなぜ報われないのか 失われた技能蓄積の機会は、このさき取り戻すことができるか?
卒業即就社、日本ではまだまだ当たり前?
2015年4月就社の新卒就職活動が12月1日から始まった。筆者が勤める一橋大学でもリクルートスーツを着た学生をキャンパスでちらほら見かけるようになった。学校から職場への間断ない移動を実現するこの就職活動だが、いったいなぜこのような慣行が成立したのか、どのような機能を果たしているのか、今後はどうなっていくのかということを労働経済学の視点から考えてみたい。
日本では、いわゆる名門大学の卒業生の多くは、大学4年の夏ころまでには就職先から内々定を受け取る。また必ずしも名門に分類されない大学、専門学校、高校の卒業生にしても卒業時点で就職先が決まっていることは珍しくない。しかし、学校を卒業してすぐに仕事へ移行するというのは国際的にみると決して一般的とは言えない。
ヨーロッパの若者の場合は?
少し古い数字になってしまうが、1994年から2000年のヨーロッパ12か国のデータを用いた研究によると、学校を卒業してから最初のパーマネントな仕事につくまでの期間は、デンマークの21か月からスペインの57か月まで、かなり長い期間に及んでいる(Quintini, Martin and Martin, [2007])。学校を卒業して2年から5年、短期の仕事やインターンシップの中で、仕事を覚えつつ自分に合った仕事を探す、そんな若者たちの姿が浮かび上がってくる。
日本にせよ、ヨーロッパにせよ、世界中どこの国を考えてみても、大学や高校を卒業したばかりの若者が即戦力になるケースはまれだろう。そのため、労働者が身に着けるべき技能の幅や深さは職業によって大きく異なるものの、働きながら技能を学んで生産性を上げていくことが重要になる。
その技能を身に着ける労働市場の仕組みには大きく分けて外部労働市場と呼ばれるものと内部労働市場と呼ばれるものがある。日本において新卒一括採用が重視されてきた理由は、この二つの労働市場の仕組みの違いから説明できる。
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