新卒以外の"潜在能力"はなぜ報われないのか 失われた技能蓄積の機会は、このさき取り戻すことができるか?

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収入は少なくとも、どこでも使える技能を

まず、外部労働市場を通じた技能蓄積というのは、たとえば料理人がレストランの下働きとして低い賃金で働きながら、先輩から技を教えてもらい(ぬすんで)、腕を上げたらその技に見合った高い賃金を払うレストランに移ったり、自分自身で店を持ったりする場合のようなイメージである。金融機関に勤めるエコノミストやアナリストが、やはり下働きからはじめて、外から評価されるようなレポートを書けるようになったら、転職して高収入の職場を目指すというのもこれに近い。

共通するのは身に着けた技能の生み出す成果が企業の外の人にもわかりやすいことだ。この場合、技能を身に着けたらそれを武器に転職できるようになるので、技能を身に着けた成果は本人にかえってくる。転職しないまでも転職の可能性があるだけで企業はその生産性に見合った賃金を支払わないと労働者を引き留められない。

そのため企業は技能投資の費用を負担してくれず、労働者は低賃金を受け入れるという形で実質的な授業料を払いながら技能を学んでいく。ヨーロッパやアメリカではどちらかというと、この仕組みを中心に労働市場がまわってきた。また、日本でも小さな企業の労働市場はこの仕組みに近い。

飴とムチで育てられる「うちの会社のため」の人材

一方、大企業の労働者を中心に日本の労働市場参加者にとって馴染み深いのが、内部労働市場を通じた技能蓄積である。内部労働市場とは、特に諸外国においては多くの場合(外部)労働市場が果たしているような役割を、一企業が社内の仕組みによって代替することを言う。

2010年、ある企業の入社式の様子(撮影:尾形文繁)

会社の中に人事評価の仕組みと賃金体系を整備し、その評価に基づいて昇進・昇格や賃金、処遇を決める。長期雇用を保証し、高い評価を得れば昇進させ待遇を上げるという飴をあたえる一方で、仕事ぶりを厳しく評価するという鞭も使う。技能蓄積にあたっては、ジョブローテーションやオンザジョブトレーニングを駆使して、じっくり人材を育成し、適材適所に配置して、高生産性を実現しようとする。

このような内部労働市場を通じた技能蓄積が外部労働市場を通じた技能蓄積より優れている点を一つ挙げよう。それは、外にはアピールしにくいタイプの技能をも育成できる可能性があるというところだ。

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