北海道新幹線、札幌開業までの「長く短い12年」 「ホーム位置」決着、駅周辺の開発構想が始動

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それでも、北海道新幹線開業までには、予測困難な破壊的イノベーションがいくつか起きるだろう。AIや自動運転、ロボットなどの導入を視野に入れる一方、団塊の世代が後期高齢者になる2025年ごろまでに、旅行や観光の姿が大きく変わる状況も想定しておかなければならない。何より、人口減少下での並行在来線対策や、沿線各地の地域づくり・駅づくりが控えている。

出席者からは「ここにいる人たちは異動が付きもので、12年後に向けて何らかの責任ある対応やコメントができる立場にない」という発言があった。

整備新幹線の開業地では往々にして、組織内や組織同士の「縦割り」、機械的な異動による「輪切り」など、いくつもの不具合が浮き彫りになる。それをどう乗り越えていくか。そもそも、行政・経済界と市民の時間感覚には大きな差異がある。

筆者がこれまでの開業を調査してきた感覚では、沿線の住民や地域社会が「開業」を実感できるのは、早くても開業の2年前だ。しかし、インフラ整備だけでなく、ソフト面でも、この時期は準備の総仕上げというべき段階に当たる。この感覚の差をどう埋めていくか。

「北海道新幹線学」を提案

筆者は数年前、「新幹線学」というキーワードを起点として、整備新幹線や地域の対応を論じることを考えた。2018年度には愛知大学の助成を得て、「新幹線学」の構築に関する基礎的な共同研究を展開することができた。これらの経験を踏まえて、今回の講演では、北海道新幹線がもたらす「光と影」を検討しながら、北海道の将来像を探っていく枠組みとして「北海道新幹線学」という視点を提案した。

開業3年を迎えた北海道新幹線・新函館北斗駅(画面中央)=2019年2月(筆者撮影)

3月16日には青函トンネルを挟む北海道新幹線・貨物列車の共用区間の上限速度が時速140kmから160kmに引き上げられ、東京―新函館北斗間の最速が4時間を切った。

報道によればすでに、180km化も視野に入っているという。また、長くボトルネックとなってきた東京―大宮間の速度は110kmから130kmへスピードアップされる。

JR東日本は360kmの営業運転に向けて、試験車両「ALFA-X」を開発、5月以降に走行が始まる予定だ。盛岡以北の「整備新幹線」区間の260kmの上限変更も取りざたされている。

一方で、JR北海道の経営の行方は見定めがたく、道路と鉄路の役割分担もまだ見えない。北海道新聞の報道によれば、共用走行区間において、新幹線の高速化を実現するため、物流を海上輸送に切り替えたり、新幹線車両を使ったりする手法を国土交通省が検討しているという。JR貨物の将来像も不透明になりつつある。

「札幌市民で新幹線に乗ったことがない人は珍しくない。自分も社会人になって初めて乗った」と地元在住の友人は打ち明ける。道民は新幹線になじみがないだけか、それとも札幌や北海道には本当に効果が薄いのか。北海道新幹線は札幌の街をどう変えるのか。さまざまな問いかけと営みが、「12年後」に向けて始まりつつある。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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