北海道新幹線、札幌開業までの「長く短い12年」 「ホーム位置」決着、駅周辺の開発構想が始動

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中でも、市民の注目を浴びてきたのが、札幌駅南口広場に隣接する「北4西3」街区だ。この区画は、かつて道内初の百貨店として開業した「五番舘」が建ち、その後は札幌西武が営業していた。2009年9月に札幌西武が閉店した後、曲折を経て跡地は更地となり、駅前にぽっかりと空いた空間はまちのイメージにも影を落としていた。

「北4西3」街区の札幌西武跡地。奥はJRタワー=2019年2月(筆者撮影)

しかし、2018年6月、この跡地を含む街区一帯の再開発に向けて準備組合が発足したことを北海道新聞が報じた。市は2019年度予算にこれらの再開発への補助事業を計上するなど、後押しを強めている。

さまざまなプランを思い起こしながら市街地を眺めるうち、西郊の手稲山をバックに北海道新幹線が札幌駅へ走り込んでくる日は、それほど遠くない、と実感がわいてきた。

新千歳空港が悪天候などで閉鎖になった際、北海道新幹線経由で北海道―本州を往来する動線も定着しつつある。

札幌市中心部で夕食を取った折、隣り合わせた地元の20代の若者は「新幹線はおじさんたちしか関心を向けない乗りものではないか」と建設の意義に懐疑的な言葉を発してはいたが、「それでも、新幹線のある暮らしがどんなものか、自分は知りたい」と語っていた。札幌市内でも、北海道新幹線の存在感は次第に高まっているようだ。

市民感覚ではまだ遠い「開業」

とはいえ、市民生活の感覚でいえば、「12年後」は遠い未来だ。また、北海道新聞は2018年8月、全道郵送世論調査の結果を掲載し、北海道新幹線の全線開通を「期待できる」と評価した回答者が28%止まりだったことを伝えた。

札幌開業に向けて今から、何にどう備えればよいのか。それを探り、考えるのが、今回の札幌訪問の目的だった。北海道新幹線建設促進期成会の会合に招かれ、自治体や商工会議所の方々に1時間ほど講演し、意見交換した。

筆者自身にとっても「見えない未来」だけに、歯切れの良い解説は難しかった。それでも、一部のファンがネットで公開し始めているように、「想定時刻表によるシミュレーション」を試してみては、と提案した。

また、例えば金沢が開業10年前に「鼓門」など駅前を整備していた事例や、飯山が10年がかりで駅周辺整備を進めてきた事例を参考に、人づくり、組織づくり、文化づくりなど「10年かけなければできないこと」を検討してはどうかと提起した。

新小樽駅ができる小樽市はこの連載でも紹介した久留米市の事例(2018年12月12日付記事「新幹線の途中駅、久留米のタフな生き残り策」
が、他の途中駅には飯山駅の事例(2015年12月2日付記事「北陸新幹線『かがやき』が通過する駅の模索」)が参考になる可能性があることにも言及した。

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