若者のヤル気を高める人事システム、腕を磨く仕事で鍛える
まず人財戦略子会社CCCキャスティング(Cキャス)が新卒を一括して採用する。所属はCキャスのまま、グループ各社へ出向し、1年から1年半業務に就く。これで終わりではなくさらに次の職場へ出向。3年間で2~3の職場を経験してから最初の配属先が決まる仕組みだ。
やる気はあっても、できることの差から、入社早々壁にぶつかる若者も多い。そこで「何に向いているのかという自分探しも含めて、いろいろ経験できる期間を設けた」(Cキャスの高橋誉則社長)。
複数の事業会社を経験すれば、グループとしての方針も見えやすくなる。また「最近の学生は長期的な視野に欠けるきらいがあるうえ、実際のコミュニティは意外と狭い」(Cキャスの清宮俊之取締役)ので、なるべく多くの人と接せられるようにという狙いもある。
入社4年目に本配属となるわけだが、これを補完するのが08年7月に導入された「社内転職市場」。CCCは持ち株会社なので、実際の事業は子会社が行っている。社員が、所属している子会社の事業とは別の事業に挑戦したいというときのための、いわばFA制度だ。
転職を希望する社員は、Cキャスに申請、Cキャスは希望を聞いたうえでポストを探す。会社と当該社員が会い、需給が一致すると内定。内定が出るまで、転職の件を所属会社が知ることはない。当該社員は内定から2週間以内に決断する。「やっぱりやめた」も可だ。365日いつでも申請できるが、転職後1年間は利用できない。
所属会社は翻意させるべく慰留はできるが、拒否はできない。どれほど重要な社員でも例外なし。実効性を担保するために理念等をまとめた「CCCグループ人財流動化憲章」を作成、各事業子会社社長に署名してもらっている。「了承し、違反しません」という意味だ。
同制度は意欲ある人材の流出を防ぐために考案されたが、それに加え、気に入らない配属だとすぐ辞めがちな若者対策にもなっているという。
新卒採用の社員がこの制度を利用できるのは4年目、つまり本配属となった年から。裏を返せば、4年目から転職市場で通用する技能を身に付けることを要求されているわけだ。7月以来、3人が内定を取得し、30人弱がCキャスと相談中という。
急速に業容が拡大したCCCだが、現在は人材の再配分を考える時期にある。その点でも社内転職市場は有効な手段だ。今後動向が注目されるのが、実は初の4年目本配属となる06年採用組60人。「中堅は現在の職場にしがらみも多いが、若者にはそれがない」(高橋社長)。持ち前の行動力を発揮して起爆剤となれば、上の世代の“誘爆”が期待できる。
技術者を育てる社内ローテーション
「今自分が取り組んでいる仕事がいかに大切かを肌身でわかっていること」そして「自分の仕事が成功したのか失敗だったのかが明確にわかること」。その二つこそ若者が「燃える」条件ではないかと飯塚哲哉ザインエレクトニクス社長は語る。
東芝の半導体技術研究所LSI開発部の部長から転じ、91年「あなたのもの」の古語「ザイン」を冠して社名とした半導体開発・設計企業を創業。日本のファブレス半導体メーカーの代表格となり、01年に株式公開も果たした。