トヨタが「聖域」に手をつけざるをえない理由

系列の実質一本化で販売会社は大競争時代へ

トヨタの場合、基本的に各都道府県の有力地場資本が販社を経営している。この体制が「販売のトヨタ」を作り上げた反面、再編を進めにくい要因でもあった。トヨタ内でもチャネル改革の必要制はたびたび指摘されるも、いわゆる「聖域」には手をつけられずにいた。

だが、高齢化によるドライバー人口の減少とカーシェアの拡大により、販売台数減は現実味を帯びる中、チャネル改革に踏み切った。全車種の併売化とともに、現在40弱ある車種は2025年ごろに約30車種まで減らす方針だ。

全車種販売にメリットも競争激化は必至

改革の先陣を切るのが冒頭で示した東京にある直営販社だ。今年4月に4社を統合し、全車種販売を始める。

これまで扱えなかった人気車種を扱えるのは各チャネルにとってメリットになる(編集部撮影)

この展開に、「販売店数が維持されるかどうか。いずれ統廃合が起きるのではないか」(東京郊外のトヨペット店の社員)という懸念は当然出てくる。一方、「これまで扱えなかったアルファードなど人気車種を扱えるのはメリットになる」(カローラ店社員)との前向きな声も聞かれた。

地場販社の経営者らの受け止めは比較的冷静だ。「車種の数はシェアに直結する。車種の削減には反対。むしろSUV(スポーツ用多目的車)など、売れ筋を充実させてほしい」という声もあるが、全車種の併売化は「環境変化を考えるとやむなし」との反応が大半。プリウスを筆頭にトヨタは併売車種を増やしており、販社側も系列の垣根が消える覚悟があったようだ。

ただ、今後は各販社の品ぞろえが同じになるため、今まで以上に競争が熾烈になることは間違いない。「店や営業スタッフと顧客とのつながりが深くないと、顧客を他のトヨタの販売店に持って行かれる」(ネッツ系販社社長)。これこそ、まさにトヨタが狙っていることだ。

「併売化で販社の体力、競争力、お客様からの支持がわかりやすくなる」(トヨタ幹部)。トヨタ自動車販売店協会の久恒兼孝会長(トヨタカローラ博多社長)も「今までは護送船団方式でトヨタから言われたことをやっていれば良かった。これからは販社自ら考えて挑戦していく必要がある」とトヨタの意図を理解する。

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