なぜマクロミルはファンドに買われるのか 創業者の杉本哲哉・会長兼社長が語る

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――非上場化には、経営者自身が買収するMBO(マネジメントバイアウト)という選択肢もある。その場合、買収を行う資産管理会社がいったんは大きな借金を抱えるが、その会社をマクロミルと統合すれば、借金は会社に付け変わるため、経営者の懐は痛まない。そういう形で非上場化を行う会社も増えているが、MBOは考えなかったか。

考えませんでした。私は、社長という役職に必ずしも恋々としていない。この話はずっと社員にもしています。またリクルートでの経験からオーナー経営のもろさも経験しており、誰が社長をやっても成り立つような会社にしなければ会社は永続できない、という考えももずっと話してきました。

そういう意味では、MBOは私のポリシーに合わない。それによってオーナーの株式保有率を拒否権があるところまで高めることはできるでしょうが、オーナー経営に依存しない永続性の追及に反してしまう。MBOというのは、私が今まで通してきた筋とは違うんですよ。

オーナーから「雇われ経営者」に

――しかし自分が好きに経営できるほうが楽だし、自由なのでは?

私は現在46歳なのですが、あと5年経って50歳を過ぎたときには、SNSにしろ、スマホにしろもっと進化しているのは間違いない。今よりもっとビュンビュンした世界になっている。そんな時代に、何もわからないのに、目だけ黒くて元気で、株も3分の1持っていて大株主風を吹かせていたら、もう大迷惑なだけだと思いますよ。

――とはいえ、ベインは厳しい要求もしてくる。

それはそうですね。でも私は厳しいことを言われるのが嫌いではないので、ウエルカムです。これからは、1人の「プロ経営者」として会社に向き合っていく。

上場している間は、株主から預かったオカネを再投資してうまくいくのかいかないのかドキドキする経営だったが、これは精神衛生的にしんどかった。これからはベインとだけ対峙すればいい。ベインが私を最適な経営者ではないと判断すればどうぞクビにしてください、という心構えでやっていく。オーナー経営者ではなく職業的経営者として、どこまでこの会社や事業と向き合えるのか、伸ばしていけるのか。そこにチャレンジしていきたいと思います。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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