マクラーレンに乗ってみた!! 市販モデルに詰まった、F1仕込みのレーシング魂
車間が少し詰まりぎみだった首都高速道路4号線で、前を走る車が運よくほとんど見えなくなったタイミングがあった。ほんのわずかな時間だったが、「マクラーレン 12C スパイダー」の神髄に最も近づけた瞬間は、そこだった。
12Cスパイダーのアクセルを思い切って踏み込むと、運転席のすぐ後ろに積まれた、最高出力625馬力を誇る排気量3.8リットルのV8ツインターボ・エンジンは、その本領を余すところなく発揮した。エンジンやマフラー(排気管)から出ていた音は、猛々しく官能的なサウンドに変質。あっという間にスピードを上げた。すぐに「これ以上は危険」と減速したところ、ブレーキはこれまたガツンと効いた。いずれにせよ、スピードメーターをちゃんと確認している余裕はなかった。それほど、すさまじい加速と減速だった。
レースのような、とは大げさだが、少し張り切ったスポーツ走行こそがもっとも生き生きとする。F1仕込みのレーシング魂が詰まっている市販車。それが12C スパイダーに抱いた印象だ。
車両価格は3000万円!
マクラーレンといえば、世界最高峰の自動車レース「FIA フォーミュラワン世界選手権(F1)」を連想する人が多いだろう。ホンダやメルセデス・ベンツなどと組み、F1マシンの開発・製造やチーム運営などを手掛けてきた、英国の名門レーシング・ファクトリーである。今年は「マクラーレン・ホンダ」の復活(2015年シーズンから)を発表し、日本でも話題となった(関連記事「ホンダのF1復帰、エコカーとの意外な関係」)。
そのマクラーレンが市販車を製造・販売していることは、ご存じだろうか。1990年代には、「マクラーレンF1」というスーパーカーを製造・販売していたことがある。そして現在は、マクラーレン・オートモーティブという会社を通じて、2011年から1年に1モデルずつ新型車を投入しているのだ。
最新モデルとして2013年に発表した「マクラーレンP1」は世界限定375台、車両価格が約1億円という超高額車ながら、すでに完売。現在はキャンセル待ちの状態である。
P1に先駆けて、マクラーレン・オートモーティブが2011年に発売した第1弾モデルが「マクラーレン 12C クーペ」。これと同じエンジンを搭載し、屋根の開閉機能を付けてオープンカーとしても走れるように設計した第2弾モデルが、2012年に投入した12Cスパイダーである。12Cクーペの車両価格は日本円で2790万円、12Cスパイダーは3000万円。P1ほどではないが、それでも超高額だ。宝くじに高額当選するか、セレブでなければ絶対に買えないだろう。