格付けの08年動向と09年見通し、下方修正が鮮明に《スタンダード&プアーズの業界展望》

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事業法人・公益事業格付部
依田真美
吉澤亮二
小林 修

スタンダード&プアーズが2008年に実施した日本法人の長期発行体格付けの変更は計36件で、引き上げと引き下げが各18件で同数だった。しかし四半期別にみると、第1・第2四半期には格上げが格下げを上回っていたが、第3四半期には格上げ3件に対し格下げが6件と逆転した。第4四半期には格上げ1件に対し格下げが8件と、年末にかけて格下げ優勢がより鮮明になっている。日本法人の年間格付け変更件数は、2004年以降、格上げが格下げを上回って推移していたが、この傾向が終息した。

向こう6カ月から2年程度の格付けの方向性を示すアウトルックの変更(格付け変更に伴うものは除外)は、上方修正が7件に対し、下方修正は50件にのぼっており、信用力が下降に転じたことを鮮明に示している。12月末時点のアウトルックの構成比は、引き続き大半が「安定的」だが、「ネガティブ」が13%と、「ポジティブ」の5%を大きく上回っている(持ち株会社とその傘下子会社、あるいは同一持ち株会社傘下の子会社は合わせて1社として算出)。国内外経済の不透明感は依然強いことから、日本法人の格付けの下方遷移傾向が続く可能性がある。

セクター別にみると、ソブリン関連では6月に日本政策投資銀行(AA−/A-1+)のアウトルックが、完全民営化まで強い政府支援が期待されるとして、「ネガティブ」から「安定的」に変更された。それ以外に格付けやアウトルックの変更はなかった。自治体セクターでは、格付けの変更はなかったが、11月に横浜市のアウトルックが財務改善ペースが想定より遅れるとの見通しを反映して「ポジティブ」から「安定的」に変更された。これに伴い、大学法人セクターで、横浜市立大学のアウトルックが「安定的」に下方修正された。

事業会社セクターでは、事業面でのリストラの進展や財務体質の改善を反映し、第1四半期に非鉄金属や総合商社で計7件、第2四半期に電機、自動車、小売りなどで計5件の格上げがあった。しかし、下半期の格上げは7月の富士通(A−/安定的/--)1件だけで、8月以降はゼロだった。格下げは2月、6月、7月に各1件あり、いずれも業績不振や事業・財務方針の変更といった個社の要因によるものだった。アウトルック変更は、上方修正が4件、下方修正が19件と、下方修正が圧倒的多数を占めた。すでに上半期の時点で上方修正3件に対し下方修正が6件と上回っていたが、下半期は上方修正が1件である一方、世界的な景況の悪化を受け、電機、自動車などで下方修正が13件にのぼり、信用力の低下傾向が一段と明確になった。なお、12月末時点のアウトルックの分布は、依然として「安定的」が大半を占めるものの、「ポジティブ」「ネガティブ」の先はそれぞれ3社、16社と「ネガティブ」が優勢である。

金融セクターにおける格付け変更は、格上げが5件あったものの、格下げが15件と圧倒的に多かった。上半期の格下げは新銀行東京(同行の格付けは7月に取り下げられている)の1件だけだったが、8月から9月にかけて、外国法人の日本現地法人や支店で、親会社の格下げに伴い計5件の格下げがあった。また、第4四半期には厳しい経営環境の続く消費者金融・ノンバンク4社で計4件(うちNISグループ(B/CWネガティブ/--)は2度、プロミスとその傘下の三洋信販は合わせて1件としてカウント)が格下げとなったほか、外国法人の日本現地法人や支店で計3件の格下げがあった。一方、格上げは、自己資本基盤の改善などが評価された足利銀行(BBB−/安定的/--)を除いて、すべてグループ再編やグループ内での戦略的位置付けの変化に伴うものだった。

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