格付けの08年動向と09年見通し、下方修正が鮮明に《スタンダード&プアーズの業界展望》
金融セクターのアウトルック変更では、信用力の下降傾向がより鮮明に表れている。上方修正が3月と6月の各1件にとどまったのに対し、下方修正は29件にのぼった。1月から2月にかけ、外国法人の日本現地法人や支店で親会社のアウトルック変更に伴う下方修正が5件あったほか、国内生命保険5社のアウトルックが資産運用環境の悪化に伴い「ポジティブ」から「安定的」に修正された。また9月には地方銀行10行のアウトルックが、景況の悪化を主因に「ポジティブ」から「安定的」に変更された。10月には新生銀行が「A−」から「BBB+」に格下げ、12月には、あおぞら銀行のアウトルックが「ネガティブ」に下方修正された。両行ともに財務内容や収益基盤の劣化が主因である。12月末時点のアウトルックの分布は、依然として大半が「安定的」だが、「ポジティブ」「ネガティブ」の先はそれぞれ6社、12社(持ち株会社とその傘下子会社、あるいは同一持ち株会社傘下の子会社は合わせて1社として算出、「クレジット・ウォッチ」指定中のものを除く)と、「ネガティブ」が多い。
国内外経済の不透明感の強まりを考慮すると、2008年後半から年末に向けて鮮明になった格付けの下方遷移傾向は2009年も続く可能性が極めて高い。世界的な景況の悪化に加え、急速に進んでいる円高も自動車やエレクトロニクスをはじめとする輸出依存度の高い製造業にとって収益面で大きなマイナス要因となっており、事業会社セクターでは信用力の下降傾向が一段と幅広い業種に広がる可能性がありそうだ。金融セクターでも、格付けの下方遷移傾向が続く可能性が高い。金融セクターの信用力は、国内景況の状況(例:企業倒産件数など)と相関が高い。このため、国内景況感の低迷が継続すると予想される2009年は、同セクターの信用力への下方圧力が続くとみている。
1) 調査対象は、海外法人の日本子会社を含む日本企業と、日本国、政府系機関、国公立大学法人・学校法人。
2) 格付けの変更は、長期発行体格付けに関するものだけを勘定している。
3) 親会社の格付け変更に伴って、子会社や孫会社の格付けやアウトルックも変更になった場合、また複数のグループ会社の格付けやアウトルックが変更になった場合、変更はまとめて1件と数える。
4) 「クレジット・ウォッチ(CW)」への指定は、アウトルックの変更件数に反映されない。
5) 格付け分布については、同一グループ内で親子関係にあり、格付けの連動性が強いものはまとめてカウントしている。ただし同一の親会社を持つ兄弟会社で、親会社に格付けが付与されていない場合は、兄弟会社をそれぞれ勘定した。
6) 文中の発行体格付けは「長期/長期格付けに対するアウトルック/短期」で表示。
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