ジャカルタ地下鉄、今月開業へ「見切り発車」? 走りは順調だが駅へのアクセス道路は未完成
だが、最終的にシワ寄せを被るのは受注企業だ。ただでさえ、入札制の安値受注である。そこに急遽のスケジュール変更では、企業の負担も大きい。昨年10月にはMRTJ南北線の第2期事業、ブンダランHI~コタ・カンプンバンダン間約8kmに対して日本タイドの円借款供与が決定しているが、一部関係者から、第2期事業には参画しないという選択肢もありうるという声も聞こえる。
営業線全区間が地下となる第2期区間は、海抜が極めて低く地盤の弱いエリアであり、難工事が予想される。また、車両基地の建設場所をめぐっていまだに土地保有者との間で決着が付いておらず、再設計を求められる可能性があるなど、不明瞭な部分があるのも事実だ。
第2期区間の開業年度は2025年と予定されているが、せっかくの本邦技術活用案件に、応札者が現れないという状況は避けなければならない。
MRTJは独り立ちできるか
そして、開業後のトラブルやメンテナンスにMRTJがどこまで対応できるかも課題だ。MRTJはとにかく開業させることにフォーカスしているのが現状で、また、日本コンサルタンツなどによる開業後の運営維持支援も半年間にとどまる。
現在の方針では、9月までにMRTJは独り立ちしなければならない。MRTJと同様に日系企業連合の技術を導入し、順調な立ち上がりを果たしているように見えるタイの首都バンコクのパープルラインは、すでに存在している鉄道会社(バンコクMRTA)の新路線としての開業だが、それでも丸紅・JR東日本・東芝が設立した共同事業体が10年間のメンテナンスを請け負っている。
これに対し、今回のジャカルタの事例はMRTJという鉄道会社をゼロから立ち上げ、教育するところまで含まれているのが注目されるべき点だ。3月末の駆け込み開業が、思わぬトラブルを誘発させないことを祈るばかりである。
構想から約30年、平成も最後になってようやく実現した、「日本の電車システムをほぼそのまま輸出する」という初のプロジェクトであるが、本番はこれからなのだ。
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