日本の観光地を台無しにする「看板公害」の実情 マナー違反を止めるには「看板」しかないのか
「観光公害」以前にあったもう1つの「公害」
前回記事で、京都と世界での観光公害の話題を記しました。実は日本の観光地には、外国人観光客増加がもたらす「観光公害」以前に、もう1つの公害が長いこと存在しています。そしてそれは、残念ながら多くの日本人の目には映っていないようです。
それが「看板公害」です。
観光公害がニュースなどで取り上げられるときは、キャパシティーを超えた混雑や、違法民泊の問題がクローズアップされがちです。しかし名所や町にあふれている看板も、観光や文化に間違いなくダメージを与えています。
試しに観光名所を訪ねてみましょう。
近くに行くと、街角に「何々寺はこちら」、駐車場には「入り口はこちら」、門には「重要文化財」、参道には「順路はこちら」、路地には「トイレはあちら」の看板が。中に入れば、その玄関に「土足厳禁」「禁煙」「火気厳禁」。廊下と座敷前、庭の前には「撮影禁止」。美術品には「撮影禁止」に加えて「ガラスに触るな」。
見終えて名所を出れば、その出口には「売店はこちら」。出たところでもう一度「駐車場はこちら」と、最初から最後まで、際限なく看板に迎えられます。従来の文字による注意や標識に加え、最近ではアニメやゆるキャラを加えたバージョンまで増殖しています。
どんなに由緒のある寺社仏閣であろうとも、ひとたび足を踏み入れれば、「境内禁煙」「立ち止まらないでください」「危険」「柵外に出ないでください」といった、注意のオンパレード。境内を見渡して目に入ってくるのは「有料駐車場/ご参拝の方は無料です」「受付所」「TOILET」「厄除け祈願受付」……。