小学校プログラミング必修化の知られざる意義 2020年導入でいったい何が起きるのか

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――中学受験塾に通う子どもがいる友人も言っていました。子どもがテストで間違えた問題の答えを、消しゴムで消して隠そうとしてショックを受けたと。間違ったらその理由を考えればいいわけですが、子どもは間違いを否定されて叱られることがとにかく嫌なんですよね。そのまま大人になっている人も少なくないかもしれません。

失敗を繰り返しながら、思考力を養う

石田:小宮山さんはもともと、プログラミング教育は料理を作るのと同じだとおっしゃっていますよね。間違いや失敗を繰り返さないと、おいしい料理が作れないように、プログラミングも失敗を繰り返しながら結果にたどりつくことに意味があると。

小宮山利恵子(こみやま りえこ)/リクルート次世代教育研究院院長、国立大学法人東京学芸大学客員准教授。1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。国会議員秘書、ベネッセなどを経て「スタディサプリ」を展開する株式会社リクルートマーケティングパートナーズにて2015年12月より現職。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。教育新聞特任解説委員。超教育協会上席研究員。アメリカ国務省招聘プログラムInternational Visitor Leadership Program("Education in the Digital Age"、2018年)、フィンランド外務省教育省招聘プログラム(2017年)参加。全国の学校などで情報リテラシーや未来の教育について多数講演。教育関連で視察した国・都市は19カ国、41都市にのぼる(撮影:尾形文繁)

小宮山:そうですね。どんな材料を用意して、どういう火加減で、どう調理すれば、自分が作りたい料理を完成させることができるのか。微調整ややり直しを繰り返しながら、誰に叱られもせず否定もされずに作り上げる料理は、プログラミングと同じだと私は思っています。自分自身でどのようにしたらうまくいくかを考える過程で、批判的思考力も身につきます。

石田:今までの小学校教育で、それに該当する授業があっただろうか?と考えると、創意工夫という点では図画工作で自由に作品を作ることはあったかもしれない。でも、試行錯誤する力や課題解決する力を育むという意味での授業は、まったくと言っていいほどなかったのではないでしょうか。そういう意味で、プログラミング教育の必修化というのは、日本の教育史上、画期的な改革だと思います。ただ、各教科でどういうふうに導入するかは、具体的な内容は決まっていないんですよね。

――文科省は、“各学校の創意工夫によって、各学年、各教科で積極的に取り組むように”ということを、文書で伝えているだけです。いくつか導入例は紹介されているようですが……。

小宮山:ですから、ITに詳しい先生がいるかいないか、ICT教育に積極的な学校かそうじゃないかで、プログラミング教育のレベルにかなりバラツキが出るのではないかと言われています。そうならないためには、支援員を増やす必要があるのですが。

石田:プログラミングは初めてという先生も多いでしょうが、ある程度は知識がないと誰でも教えられるものではなく、必修化が始まってしばらくは混乱するかもしれませんね。算数や理科は、実際の導入例もあって比較的取り組みやすい教科だとは思いますが。

小宮山:算数の多角形を、プログラミングを使って作図させてみるとか、いくつかの指導案は公開されています。つい先日伺った鳥取県の私立・青翔開智中学・高等学校では、理科の授業でプログラミングを使ってカイワレ大根を育てていました。光の三原色や照射時間の配分をチームごとに考えさせて、自動でスイッチが入るようにプログラミングもしてもらって、どのチームのカイワレ大根がいちばんよく育つか競い合うという実験です。

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