小学校プログラミング必修化の知られざる意義 2020年導入でいったい何が起きるのか

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『レゴⓇ WeDo 2.0』など、学校によりさまざまな教材が導入されている(機材協力:株式会社アフレル)

――ゲームやスマホに慣れている子どもたちはプログラミング教育と親和性が高いということですね。

石田:親が昭和的な古い価値観で、プログラミングのことはよくわからないから子どもにもやらせなくていい、と判断する可能性も少なくありません。でも、子どもが興味を持ったものがあれば、それに触れさせるチャンスを与えると考えるといいかもしれません。その後、やるかやらないかは、本人に決めさせればいいんです。

小宮山:プログラミングに興味を持った子どもの中には、このような簡単な仕組みの教材では物足りなくなって、自分からプログラミング言語であるJavaやC言語などを覚えて打ち込んでいく子もいます。自分でコンピューターの基板をはんだごてを用いて作りはじめる子もいます。

石田:逆にやりたくない子に無理にやらせる必要はないんですよね。日本の基礎学力の高さは世界でもトップレベルですから、今までの教育がすべて間違っているわけではないと私は思っています。ただ、テクノロジーを活用した教育が増えたことで、学び方の選択肢が増えたことは間違いないので、その中から自分の子どもに合ったものを選べばいいわけです。

――そう考えると、親も気が楽です。プログラミング教材にはロボットや乗り物を作るものが多いので、男の子には人気かもしれませんが、女の子は関心を持たない可能性もあると思いますので。

小宮山:確かにそれはありますね。やはりIT業界に女性が少ないのと同様に、プログラミング好きの子どもも男の子が大半ですから。例えば、『教育版レゴⓇ マインドストームⓇ』を使用して製作したロボットの技術を競い合う国際的コンテスト「WRO(ワールド・ロボット・オリンピアード)」も、女の子のエントリーは2割程度です 。

身につけた知識を組み立て、活用するプログラミング

石田:長年生徒を見てきて、戦いや競争が好きなのは男の子で、女の子はどちらかというと自分で作った作品を発表したり、ストーリーを作って展開するほうに興味を持つ傾向はありますね。そのあたりの工夫次第で、いくらでも女の子向けの教材はカバーリングできると思いますけれど。

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小宮山:以前、アメリカで行われたSXSWeduという教育のカンファレンスで、テキサス州の高校の女子生徒が、プログラミングしてデザインしたロボットでファッションショーを開いたという事例紹介もありました。世界的には、女の子のニーズに合わせたプログラミング教材の開発やコンテストの誘致を増やそうという動きが出てきていますね。

石田:プログラミング思考力が身につくと、物事がどういう仕組みでできあがっているのか、その組み立て方や構造に興味関心を持つようになると思います。「なぜ?」「どうして?」と疑問を持つことから、自発的な学びは始まりますから。今までの教育による知識の習得はあくまでも手段であって、その知識を活用するための考える力を身につけるために、プログラミングはいい学びのツールになると思います。

(後編に続く)

樺山 美夏 ライター・エディター

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かばやま みか / Mika Kabayama

リクルート入社後、『ダ・ヴィンチ』編集部を経てフリーランスのライター・エディターとして独立。主に、ライフスタイル、ビジネス、教育、カルチャーの分野でインタビュー記事や書籍のライティングを手がける。

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