シングルマザーへの偏見が建設的でない理由 データを見ればやるべきことは決まっている

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筆者自身はシングルマザーにとくに肩入れをするわけでも、ネタにするわけでもなく、公的データを分析した結果、「彼女たちの貧困の解消が国全体で見てもプラスに働く」と書いただけだが、それが彼女たちにとって非常にフェアに感じられたという。

この経験を通じて感じたのは、最初から過度に肩入れしたり、偏見を持ったりして解消策を論ずるのではなく、あくまでデータに基づいた解消策を淡々と論ずることの重要さだった。

さまざまなシングルマザーを取材してまず気づいたのが、当然のことながら、シングルマザー全員が貧困に苦しんでいるわけではないということだ。相対的に見てレアケースではあるが、同年代の男性よりも稼いでいる裕福なシングルマザーもいれば、平均をやや上回る収入を確保しつつ、ある程度自由に育児と仕事を両立して、人生を謳歌しているシングルマザーもいる。

シングルマザーが正社員になれない根深い理由 

彼女たちの話を聞いていると、リモートワークでも価値を発揮できるスキルや知識がある人が多い。彼女たちに共通しているのは、結婚や出産を経ても、キャリアを途切れさせていなかったり、自営業者として自分が現場で働かなくてもお金を稼ぐ仕組みをつくり上げていたりという共通点がある。女性が離婚する際、これらの重要性を強く感じる。

女性が離婚に踏み切れない理由の1つに、経済的な理由を挙げることが多い。しかし、もし経済的に夫に依存しなくてもいい状態にあり、離婚が最適な選択であれば、あまり悩むことなく離婚を決断できる。経済的に独立できないと、最悪な状況下でも婚姻関係を続けることを余儀なくされる。そのため、いつでも離婚できる状態を、女性側がつくっておくことは非常に重要である。

離婚という言葉にネガティブな印象を持ちがちだが、必ずしもそうではない。子どものことを考えて、「両親がいる環境で育てるのが最善」という固定概念を持っている人は多いが昨今の虐待問題に限らず、夫婦関係が極端に悪化している中で育児するほうが、子どもに悪影響を与えかねない。無理に夫婦関係を続けるより、離婚が最適な場合もある。

ただ、仮にシングルマザーが正社員の地位を得たら得たで、育児と仕事の両立で非常に苦しむことになる。なぜなら、多くの企業では現状、子育てしていないほかの社員と同じ行動様式を求められることが多いからだ。つまり、定時の就労時間である9時から17時までオフィスにいなくてはいけない。場合によっては、社員や取引先との関係を深めるために食事や飲みに行くなどのイベントもこなしていく必要がある。残念なことに、多くの日本企業ではいまだに、このような「付き合い」が評価基準になっているのが現実だ。

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