メルカリの現金レス「メルペイ」の甘くない船出 「チャージ不要」「後払い」武器に先行組を猛追

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他社のスマホ決済サービスに目を向けると、ペイペイは初回の100億円キャンペーンを通じ400万人規模の新規利用者を獲得し、2019年2月からは2回目の「100億円キャンペーン」も始めている。LINEペイは、直近の数字を開示していないものの、2019年末に全世界ベースで月間利用者数1000万人という目標を掲げている。

これらのサービス規模にメルペイは追いつかなければならない。メルペイは現時点で、大規模なキャンペーンの実施は未定としている。ここからメルペイが追いかけていくのは厳しい戦いになる。

1次流通と2次流通のデータを融合

最後の壁は決済事業を切り口に、「メルペイは周辺の金融ビジネスまで手を広げられるのか?」という点だ。LINEをはじめスマホ決済サービス事業者は、銀行、証券、保険、家計簿、信用スコアリングなど、決済で得たデータを活用しながら金融ビジネス全般を拡大することで収益増を図ろうとしている。この点、メルカリグループには今のところ、決済と掛け合わせることで収益拡大に結びつきそうなサービスラインナップがない。

メルカリの山田進太郎会長兼CEOは記者会見で、メルペイの登場でメルカリ本体のフリマ流通額が流出する可能性を否定した(撮影:尾形文繁)

ただ、独自の決済機能はある。フリマの利用実績をもとに、手元にお金がなくてもメルカリ外の店舗での商品購入代金を後払いで支払えるサービス「メルペイあと払い」は、2019年春に投入予定だ。メルペイならではの金融ビジネスをいかに創出できるかは、異業種を含めた先行組と戦っていくうえでのカギになるだろう。

後発ゆえの知恵も使っている。2月13日の会見でメルペイは、「オープンネス(開放)」という方針に基づく事業提携を発表した。加盟店開拓などは独力に加え、KDDI、JCBらと連携。「こういう相手でないとダメ、といった考えはなく、あらゆる相手と広く組みたい。オープンネスと明言したことで、いろいろな事業者との話が進みやすくなるはず」(青柳氏)。

中長期の構想では、衣料品メーカーなどへのデータ提供も視野に入れているという。会見の場では、メルペイを通じて得られた1次流通の決済データとメルカリが保有する2次流通の取引データを掛け合わせた、法人向けマーケティングの構想も明らかになった。この構想では、メルカリで売れ筋の、例えば衣料品を取り扱うメーカーなどを想定している。「1次流通の加盟店と新たな接点を持てることで、(購入データの蓄積・活用を通じ)さらなる事業発展を目指せる」(山田氏)。

他社との協業を進めながら、独自機能をいかに生み出し、ユーザーに訴求していけるか。後発のメルペイが勝ち抜くカギはここにありそうだ。

『週刊東洋経済』3月9日号(3月4日発売)の特集は、「狂乱キャッシュレス」です。
長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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