「スープラ」「カローラ」に感じるトヨタ車の異変 欠かすことのできない販売会社との協力関係

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カローラシリーズを3ナンバー車にする理由を開発者に尋ねると、次のような返答だった。「次期カローラの開発では、5ナンバーサイズに収まるヴィッツのプラットフォームを使うことも検討した。しかし入念に造り込んでも、このプラットフォームでは走りと乗り心地の質に不満が生じる。

そこで国内で売るカローラも、3ナンバーサイズに拡大した。ただし全幅は、カローラスポーツよりも少し(1740~1750mm程度に)狭める」という。

質を高める目的で3ナンバー車に拡大するというが、逆の見方をすれば「低価格志向のヴィッツとは違う、上質な5ナンバー車用のプラットフォームを開発しなかった」とも受け取れる。国内市場に真剣に取り組むなら、車種に応じて選べる複数の5ナンバープラットフォームを開発しただろう。

設計の古い車種が増加

設計の古い車種が増えたことも気になる。コンパクトカーは日本の売れ筋カテゴリーだが、その主力となるヴィッツは2010年の発売で古い。アクアも2011年、ポルテ&スペイドも2012年だ。貴重な5ナンバーセダンとなるプレミオ&アリオンの発売は2007年にさかのぼり、3ナンバー車だがミニバンで中心的なエスティマは2006年だ。

新型にフルモデルチェンジされた車種にも、従来とは違う傾向が見られる。クラウンは外観を大幅に変えてサイドウィンドーを3分割した「6ライトスタイル」になり、プラットフォームはレクサスの最上級セダンに位置するLSと共通だ。走行安定性は向上したが、乗り心地はクラウンのイメージからいえば少し硬い。グレードでは伝統のロイヤルサルーンを廃止した。

最上級セダンのセンチュリーは、先代型は独自のプラットフォームに国産乗用車で唯一のV型12気筒エンジンを搭載したが(20年間で生産台数はわずか1万台だから超絶的に高コストだった)、現行型はエンジンやハイブリッドシステム、プラットフォームなどを先代レクサスLS600hLと共通化している。しかも700万円以上も値上げした。

現行レクサスLSは全長が5235mm、全幅が1900mmと大型化され、先代型の所有者からは「車庫に収まらない」という苦情が聞かれる。もはや国内の交通環境は考慮していない。

従来のトヨタ車では「かゆいところまで手が届く」入念なクルマ造りが特徴で、SUVやピックアップトラックを除くと、フルモデルチェンジの周期も適切だった。

それが今のようになった背景には、国内で売られる車種の整理がある。トヨタは2025年までに全店(トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店)が全車を扱う体制に移行して、車種数も30車程度まで半減させるという。トヨタの開発者からは「主に姉妹車が整理され、マークXも現行型が最終型になるだろう」という声が聞かれる。

以上のようなトヨタの動きは、すべて合理化が目的だ。特に最近のトヨタからは、TPS(トヨタ生産方式)と原価低減を徹底的に磨く方針が打ち出されるようになった。さまざまな影響が生じるが、日本のユーザーに最も大きく関わるのが、先に述べたクルマ造りの変化や国内で売られる車種の削減だ。

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