京急が引き下げ、「加算運賃」が抱える問題点

条件満たしても「値下げ」されない例があった

廃止時期が議論となった加算運賃だが、そもそも設定時の認可プロセスにも課題がある。現在、JR、大手私鉄などの鉄道運賃は運輸審議会が国交大臣の諮問を受けて答申を出し、大臣がそれを尊重して認可する仕組みである。京急の場合、1998年に本加算運賃の認可申請を行っているが、運輸審議会は1998年10月20日、これを「軽微な事案」と認定して審議せず、翌日に運輸大臣(当時)が申請どおり認可した。

加算運賃制度にはこれらに加え、複々線化工事の促進を目的とする特定都市鉄道整備促進特別措置法(特々法)によるものもある。西武鉄道はかつて新宿線において、運賃に加算する形で同線の複々線化費用を利用者から7年間にわたり先取り徴収し、その金額が総額155億円になったところで、突然住民らへの説明なしに延期(実質的に中止)を申請し、1995年3月20日に運輸大臣が認可した。これは運賃改定が伴うので、運輸審議会に諮られたが、特々法に基づく工事計画は運輸審議会事項ではないために公聴会の前に認可してしまった。

利用者が納得できる加算運賃制度を

最近になって本オンライン2019年2月12日付記事(国が画策、運賃「値上げ」で駅ホームドアを設置)でも報じているように、国交省内で2017年7月から鉄道事業者や学識関係者などを交えた「都市鉄道における利用者ニーズの高度化等に対応した施設整備促進に関する検討会」が行われた。16回にわたって行われた検討会の結果として、2018年9月に出された報告書には「利用者の利便性、安全性及び快適性向上に著しく寄与すると認められるものを、『更なるバリアフリー化』と位置づけ、これに係る料金制度を導入する」ことが提案された。

バリアフリー設備費用は輸送の対価ではないため、その費用は運賃とは切り分けて考える必要があるという考えから、加算運賃のように、バリアフリーに使われることが明確になるような制度を検討しているという。しかし、この検討会は非公開で行われ、委員に消費者代表は入れず、会議終了後に議事抄録は公開されているが、検討会で出された各社の資料は非公開のままだ。会議では消費者団体のヒアリング、アンケート調査なども行われたが、事業者に都合のよい解釈が行われているとして、国会でも議論となった。

加算運賃制度自体はより便利で快適な鉄道の推進に寄与するものであるが、その設定にあたっては消費者の参画を確保し、透明なルールを定めてほしい。鉄道の運用資金を提供するのも、その効用を得るのも消費者なのだから。

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