カロリー制限なしダイエットで減量はできるか 脂っぽい食べ物我慢なしも糖質は厳しく制限

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その後、やはり糖質を制限するアトキンス式ダイエットが話題を呼び、ケトダイエットも減量法として推奨され始めた。

野菜・果物の糖質もだめ

私たちの体は通常、炭水化物や他の糖類を分解して作られるグルコース(ブドウ糖)を主なエネルギー源にしている。しかし糖質が極端に不足すると、体は脂肪を分解して「ケトン体」という物質を作り、グルコースの代わりにエネルギー源にするようになる。エネルギー源がグルコースからケトン体に切り替わった状態を「ケトーシス」と呼ぶ。

ケトーシス状態では体はいわば「ハイパー脂肪燃焼モード」になり、脂肪をどんどん燃やす。皮下や内臓に蓄積された脂肪も燃やされ、スリムになれる。

ケトーシス状態になったかどうかは血中のケトン体濃度を調べれば分かる。吐く息にツンと鼻をつく特有の臭いがしたり、口が渇くこともサインになる。

この状態になるには、糖質の摂取量を1日50グラムまでに制限しなければならない。厳格な実践者は1日20グラム(バナナ1本分)しか取らない。代わりにオリーブ油やナッツなど高脂質食品をたっぷり食べる。牛肉や鶏肉もたくさん食べていいが、タンパク質は1日の摂取カロリーの20%までに抑える必要がある。

野菜・果物はでんぷんや糖類をたっぷり含んでいるため、糖度の低いベリー類や葉物などを選んで少量取るようにする。

糖質を極端に制限しても工夫次第でグルメな料理を楽しめるが、許可された糖質の摂取量の大半は野菜から取ることになる。

ケトダイエットは低カロリー・低脂質のダイエットと比べて短期間で大きな減量効果があると、いくつもの論文で報告されている。理由として考えられるのは、脂っこいものを食べるので満腹感が長く続くことや、ケトーシス状態になると空腹ホルモンの分泌が抑えられることなどだ。

ただし長く続けるのは難しく、1年もすると低脂質ダイエットと減量効果はほとんど変わらなくなるとも指摘されている。

「どんなダイエットにもリバウンドは付き物」と、栄養学者のアリッサ・ラムジーは言う。「しかも、3人に2人は減量前より体重が増えてしまう」

治療目的で採り入れる場合は別として、一般の人でもケトダイエットは体にいいのだろうか。

この点については研究者の見解が分かれている。指摘されている問題点は、飽和脂肪酸の多量摂取でコレステロール値が上がりかねないことや、果物・野菜の摂取量が減るためビタミンや食物繊維が不足しがちなことなどだ。

ハーバード大学医学大学院のニュースレター「ハーバード・ヘルス・レター」は、ケトダイエットでは大量の脂質とタンパク質を代謝するため肝臓と腎臓に過大な負担がかかる危険性があると警告している。

糖質制限を始めてからケトーシス状態になるには数日かかり、その間に人によっては下痢、吐き気など「ケト風邪」と呼ばれる症状が出る。長期的には便秘や思考の混乱、イライラなどの症状が表れることがある。

糖質制限に限らず何らかの形で食事を制限すれば「食べ物のことを異常に気にし、食欲をコントロールできなくなるなど食習慣が乱れかねない」と、ラムジーは指摘する。

こうしたリスクを理解した上で、ケトダイエットを試してみようと思うなら、まずはかかりつけ医に相談してみよう。

(文:イブ・ワトリング)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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