【林文子氏・講演】本当に心が満たされる仕事のやりがいとは何か(その5)
東洋経済新報社主催フォーラム「Employee Engagement Forum 2008」より
講師:林文子
2008年10月2日 ダイヤモンドホール(東京)
●従業員の問題を共有化する「共感力」を徹底しました
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「ええ?こんなに一生懸命やっていたのに。この間の展示会にお客様が来ていたの。何で私を呼んでくれなかったの。私が出ていけば、もっと状況が変わっていたかもしれない」と言うと、「だって支店長、出かけていましたよ」と言う。「ああ、そうか。その日は私用で出かけていたんだ。ごめんなさいね。もっとコミュニケーションしてれば、事態が変わったかもしれないね」と、その困った問題を共有化するのです。
「ねえ、でもちょっととりあえずお客さんのところへ行ってみたいから、連れていってくれない?」とお願いをするのです。行ってやるとは言わない。そして、ほかの車をお客さんが購入していた場合も、ネガティブに言いません。「ああ、残念だったね。もうちょっと密にコミュニケーションを取っておけばよかった。これは私も失敗しました。でもこうやってちょっとした隙に、あちらに気持ちが傾いた。こんな失敗例をお客さんは私たちに教えてくれて、ありがたかったね。二度とこういう失敗はしないようにしましょう」と話をして、それ以上とやかく言わない。結果的には勉強になったねと、すっきり終わらせてしまいます。そして「今日はAさんと半日一緒に仕事して楽しかったですよ」と言ったわけです。
そして、今度は褒めるのですね。20歳も年下のセールスに向かって、「Aさん、あなたはいろいろ説明していたけど、お上手ね。勉強になりました。どうもありがとうね」と笑顔で言うわけですね。さらに「Aさん、私、今日はちょっと反省しちゃったんですよ。支店長になったら、どうしても腰が重くなってお店にいることが多くなりました。でも、こうやって自分から出ていくと、お客さんの気持ちも分かるし、世間の空気もよく分かるね。やっぱり営業はいつも行動して出ていかなきゃいけない。こっちから攻めていかなきゃいけないね」と言うのですね。決して「あなたはいつも出ていかないでしょう」とは言いません。これは聞いているAさんにしてみれば、自分はやっぱりちょっとグズグズしている人間ですから、全然自分は批難されずに「これがいいですね」と言われて褒められて、こうしなきゃいけないと支店長が反省していると感じます。現場と共有する気持ちは、「共感力」という言葉がよく使われておりますが、これを徹底的にやらせていただきました。
(その6に続く、全8回)
林文子(はやし・ふみこ)
現・東京日産自動車販売会社・代表取締役社長。
東洋レーヨン、HONDAの営業経験などを経て、BMW東京株式会社の新宿支店長、中央支店長に就任。その後フォルクスワーゲン東京代表取締役社長、BMW東京の代表取締役社長、ダイエー会長のキャリアを経て現職に至る。
現・東京日産自動車販売会社・代表取締役社長。
東洋レーヨン、HONDAの営業経験などを経て、BMW東京株式会社の新宿支店長、中央支店長に就任。その後フォルクスワーゲン東京代表取締役社長、BMW東京の代表取締役社長、ダイエー会長のキャリアを経て現職に至る。
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