【林文子氏・講演】本当に心が満たされる仕事のやりがいとは何か(その6)
東洋経済新報社主催フォーラム「Employee Engagement Forum 2008」より
講師:林文子
2008年10月2日 ダイヤモンドホール(東京)
●組織は生き物で完成形はあり得ない、魂が集まって仕事が進んでいくのです
1通あたり200円も製作費がかかるダイレクトメールを半分にして、皆さんがお手紙を書いたり、電話したり、訪問してお客様を呼び込んできてくださいというようなこともしました。その代わり残ったお金で、お客さんに本当に喜んでもらう楽しいことをやりましょうと、能やダンスパフォーマンス、音楽会などのショールームイベントをしました。ただ車を売るだけの生活をしていた人たちに、能楽師の生活や音楽家の生き方をちょっと垣間見せてあげたのです。すると驚いたのですが、12支店中、いつも達成率最下位だったお店が、ちょうど半年ぐらいでトップに躍り出たのです。それから約5年間、その位置は下がることはありませんでした。一方、ルール違反する人に対して私は徹底的にしかりました。ほめ殺しの林と悪口を言われるほどですが、メリハリがないと駄目なわけです。徹底的にしかるものだから、相手も非常にショックなのですね。でも、いつも「悔しいからよ」と言っていました。「本当に自分がどれだけ才能あるか、分かっているの?それなのにここまでやってきたことを、すぐやめちゃうんだから」と言って、大喧嘩していたわけす。
1人ですね、私が海男というあだ名をつけた男性がいました。この人は1年中日焼けで顔が黒いのです。要するに海で遊ぶのが好きで、店の仲間を引き連れて行ってしまう。店のスタッフは交代で休んでいたのですが、ここ肝心なときにも休んで海へ行ってしまう。それに、この人が一番反発しまして、最後まで抵抗されていました。それでも私は追っかけていってでも、首根っこを捕むではないですが彼に何度も注意をしていました。
新宿支店で約5年間務めた後に、今度は中央支店というところに呼ばれました。皆さんも経験があると思いますが、一生懸命やって成果が出ると、また高いハードルを与えられます。中央支店に行ったところ、全く同じでした。貧すれば鈍するということで、お店全体の業績が悪いと意気消沈してしまって、何も新しいことが考えられない。楽しい気持ちが無いと、まるで仕事ができないわけです。そこで同じようにほめて育てました。こちらは、3カ月で達成率がトップに躍り出たのです。しかし、中央支店が1番になったら、今度は以前いた新宿店が最下位になっていたのです。これは全く不思議なことでした。私はいろいろなことを言われました。「林は新しいもの好きだ。新しい支店はトップになるけれど、前のお店は最下位になったじゃないか。結局、人を育てていないのだ」と言われました。
でも私は今、確信を持って言えます。組織というものは、完成形はあり得ないのです。生き物なのです。泣いたり笑ったりする人間が、職場に毎朝毎朝集まってくるわけです。つまり、心が全部集まってくる。魂が集まってきて、仕事が進んでいくわけです。そこで働く人たちの気持ちが寂しかったり、うんでいたりすれば、すぐ病気になって悪くなってしまうわけです。完成形は絶対にありません。だから、常にプロセスを守っていかないと駄目なのです。
(その7に続く、全8回)
林文子(はやし・ふみこ)
現・東京日産自動車販売会社・代表取締役社長。
東洋レーヨン、HONDAの営業経験などを経て、BMW東京株式会社の新宿支店長、中央支店長に就任。その後フォルクスワーゲン東京代表取締役社長、BMW東京の代表取締役社長、ダイエー会長のキャリアを経て現職に至る。
現・東京日産自動車販売会社・代表取締役社長。
東洋レーヨン、HONDAの営業経験などを経て、BMW東京株式会社の新宿支店長、中央支店長に就任。その後フォルクスワーゲン東京代表取締役社長、BMW東京の代表取締役社長、ダイエー会長のキャリアを経て現職に至る。
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