日本で「病院が足りてない町」は一体どこなのか 市町村別の全国偏差値をマップで見てみよう

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埼玉県の川口市、蕨市、戸田市では、急性期が40.2、回復期が39.5、医師数は44.4といずれも偏差値が低い。また東京都八王子市、町田市、日野市、多摩市なども全国平均より低い。これらの地域はベッドタウンとして発展してきたが、病院や医師の供給が追いついていないことがわかる。

一方、病院数が過剰な地域は、急性期病床と回復期病床の偏差値が高い地域である。とくに回復期病床は西日本に多く、日本の医療の「西高東低」ぶりが表れた。

例えば、高知県の高知市、土佐市を中心とした地域の偏差値は、急性期が69.2、回復期が66.5と高い。高知県は、1日の平均外来患者数と1人当たりの医療費が全国1位になっている。過剰な供給体制が需要を生み出している可能性がある。

注目したいのは、病床数の偏差値が高いのに、医師数が低い地域だ。例えば、広島県の三原市を中心とする地域では、病床数はいずれも偏差値60を上回るが、医師数の偏差値は49.7。病院(病床)数に見合う医師がいないということだ。住民としてはやりきれないかもしれない。

千代田区、中央区、文京区…都心部で高齢者医療が不足

日本は高齢化社会がいっそう進む。今後増加する高齢者に対応する病院が不足している地域はどこか。

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着目すべきは、急患や重症患者に対応する急性期病床は足りているが、治療が終えた後の回復期の病床が足りていない地域である。例えば、東京都の千代田区、中央区、港区、文京区、台東区などでは、回復期の偏差値が41.2と低い。

「国際的な統計を踏まえると、日本の急性期病床はOECD(経済協力開発機構)平均のほぼ倍だ。急性期病床が国内の平均より少ない地域であっても、国際比較では過剰という地域は多い。一方、回復期病床は、国際的な平均からすると圧倒的に足りていない。日本の平均を上回っていても、現実的には不足している地域がある点に注意したい」とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの森本陽介氏は指摘している。 

体力が落ちている高齢者にとって、治療後に自宅に戻るまでの支援を行う回復期の病院は欠かせない。回復期が少ない地域では、今後、急性期病院の機能を回復期へと変えていく必要があるだろう。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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