「布団の中で亡くなったんですね。ご遺体だけ警察が引き取っていって、その他の物は残されている状態です」
布団の上には、眼鏡がポツンと落ちている。頭があったであろう場所には、髪の毛がゴソッと抜け落ちていた。そして黒いハエのサナギがバラバラとたくさん転がっている。
キッチンの小さいテーブルの上には書類とともに、薬が何錠も置かれていた。クライアントからは、1人暮らしのお年寄りの男性という情報しか聞いていないそうだ。
しばらくしてドアから、青い防護服に身を包んだ男性従業員2人が入ってきた。顔には防毒マスク、手にはゴム手袋を付けている。
作業はすぐにはじまった、大きなゴミ袋に汚染された布団をそのままズボッと入れてしまい搬出する。茶色い液体は、敷布団を抜けベッドに届いていた。布団の下にも大量のハエのサナギがあった。
ベッドを作業員が大きいバールでコンコンと叩くと、あっけないほど簡単に分解されていく。ベッドの下の畳にも大きなシミができていた。畳をはがして運び出す。そして畳の下の、床下にも少しではあるが染みができていた。遺体から流れる液体は想像よりも、深くまで汚染するのだ。
物を仕分け、すべて運び出し丁寧に清掃
タンスの中に入っている、重要な物(身分証明書、通帳など)を仕分ける。仲間と山登りを楽しんだりする白黒写真が出てきて、寂しい気持ちになった。
そしてその後、タンス自体もバラバラに壊していった。すべて運び出していく。
床下に染みた液体は洗浄液をつけ、ブラシでこすって丁寧に掃除していく。
この時点で臭いはほとんど感じなくなっていた。オゾン脱臭機をかけて、作業は終了した。
部屋から運び出された廃棄物は、トラックに積まれ処分場へ運ばれていった。さすがに、手慣れた作業だった。
山本社長は作業の途中まで現場に立ち会った後、違う現場へ移動して仕事をしていた。かなり忙しそうな様子だった。
現場に立ち会わせてもらい、大変な仕事だということが、身にしみてわかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら