航空機の機長はなぜ「積乱雲」をおそれるのか

日本上空にもたびたび出てくる

このような積乱雲を横切ってしまうと、前後はまったく揺れていないのに、積乱雲に触れたときに突然大きく揺れることがあり、客室乗務員や乗客が負傷することもある。大洋上は、この形の積乱雲に注意しなければならない。

もう1つやっかいなのが、冬場の日本海にできる積乱雲である。夏と違い、冬の積乱雲は高度が高くない。この場合、低い層雲が全体を覆い、パイロットには背が低い積乱雲が見えなくなる。レーダーを頼りにするしかない。ただし、石川県の小松空港では管制官がレーダーで積乱雲を避けるのと同時に、どこで落雷があったかを表示する装置も使っているので、非常にうまく積乱雲を避けながら、最終進入コースまで誘導してくれる。

落雷後はしばらく暗いところで見えなくなることも

積乱雲のそばを飛行する場合、突如として落雷する危険性がある。人間の目は一度明るくなると、暗いところのものが見えるようになるまでかなりの時間がかかる。とくに夜間の場合、瞳孔が開いているので、落雷した時の強い光が大量に目に入ると、再び暗いところのものが見えるようになるまでさらにかなりの時間がかかる。

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これを防ぐために、機種によってはストームスイッチと呼ばれるスイッチがある。このスイッチを入れると、コックピットの中が昼間と同じように明るくなる。そのため瞳孔が閉じ、落雷してもその後で目が見えなくなることがない。ストームスイッチがない機種の場合、夜間落雷の可能性がある場合には、コックピットの中の照明を最大限に明るくして落雷に備える。

また、積乱雲の下部ではマイクロバーストと呼ばれる下降気流が発生することがある。このマイクロバーストに遭遇すると、飛行機は地上に叩きつけられる危険性がある。空港によっては、空気の移動方向を見てマイクロバーストを発見するドップラーレーダーを備え、マイクロバーストアラートを発出する。マイクロバーストアラートは、管制官を通じてパイロットに知らされる。

進入中にマイクロバーストアラートを受けたパイロットは、ゴーアラウンド(再び上昇)して、進入を継続してはならない。この場合、上空で待機してマイクロバーストのエリアが移動するのを待つか、ほかの滑走路またはほかの空港に向かうことも考えなければならない。

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