航空機の機長はなぜ「積乱雲」をおそれるのか 日本上空にもたびたび出てくる

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積乱雲でも遠くからよく見え、レーダーにはっきりと映るものは避けることができる。ところが積乱雲によっては、肉眼でははっきりと見えるのに、レーダーにはまったく映らないものがある。とくに夜間は危険である。夜間積乱雲が多い空域を飛行する場合は、レーダーのみに頼ることなく、外を見て目視に努めなければならない。

積乱雲を見つけたらなるべく早く回避する。そのためにヘディング(方向)や経路からの逸脱を管制官に承認してもらう必要がある。近づいてから避けようと思っていると、飛ぶ方向や飛行経路からずれて飛ぶことを管制官に要求しようと思ったときは、管制官はほかの飛行機との交信に忙しく、交信に割り込む隙がない場合や、要求してもなかなか許可されないことが起こりうる。

発達中の積乱雲は、1分間に数千フィート発達することもありうる。積乱雲の上部も、雲がないように見えながら気流は大きく乱れていることが多い。積乱雲の上空を飛び越えようという方法は、よほど高度差がないと危険である。

直径200㎞以上の積乱雲も

発達中の積乱雲の中では、「突然昇温」と呼ばれる急激な気温の上昇が起こる場合がある。突然昇温が起こると、空気密度の急激な変動によりエンジンが停止することもありうる。

アジア・太平洋地区の積乱雲は、列になっていてもどこかに隙間があって避けられるものが多い。これに対して、アメリカ大陸の積乱雲はでき方がまったく違う。単一の積乱雲で隙間がなく、直径が200㎞以上のものが存在する。このような積乱雲は、全体を大きく避けるしか方法はない。目的地の空港が積乱雲の下に入ると、数時間も離着陸できない場合がある。

太平洋などの大洋上で気をつけなければいけないのは、非常に細い積乱雲である。ほかには積乱雲が見当たらないのに、非常に細くまるで鉛筆のような積乱雲ができることがある。レーダーには点として映ることもあれば、まったく映らないこともある。

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