44歳初婚で2児の母になった人の怒涛の生活 35歳以上婚する人が直面する「連れ子」問題

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「男の人は少し育児をするだけでイクメンだと褒められますよね。私は新婚気分を味わえないままに2児の母になり、ちゃんとして当たり前だと思われています。ちゃんとできるわけがありません。それでも何とかお母さんをしようと頑張っているのに誰も認めてくれないんです」

この苦しい気持ちを分かち合えるのは和弘さんではないと由貴さんは気づいた。和弘さんは再婚した男性であり、継母ではないのだ。

「夫にわかってもらおうとしたのが間違っていたのでしょう。そう悟って少し気持ちが楽になりました。今は、子どもたちがノートも置けないほど机の上をちらかして、床で宿題をしていても放っておいています」

ようやく母親の気持ちがわかるようになった気がする

由貴さんが開き直ることができたのは実子である次男の誕生も大きい。不妊治療の末にようやくできた待望の子どもだ。

「この子が生まれてようやく母親の気持ちがわかるようになった気がします。そして、本当の母親がいない長女のこともかわいそうだなと思えました。私のように口うるさい『お母さん』よりも自分の『ママ』が欲しいのでしょう」

とはいえ、小さな争いは絶えない。心優しい長男は幼い弟をすごくかわいがってくれるが、娘のほうは受け入れかねている様子だ。他界した実母を「ママ」、由貴さんのことを「お母さん」と呼び分けていたのに、弟は由貴さんを「ママ」と呼んでいることに違和感と寂しさを深めたりする。そして、ますます和弘さんに依存する。

「このままでは学校にもなじめないし、ファザコンの娘になってしまうのではないかと心配しています。でも、男の人はそんなことは考えませんよね。びっくりするほど甘やかしています。長男の誕生日に『ついでだから』と長女にも服やオモチャを買ってあげたり。次男のことはそれほど構ってくれません。『上の2人には僕しかいないのだから』という言い分。夫婦げんかの8割は長女に関することが原因です」

それでも夫婦仲が悪いわけではない。長女は夜も和弘さんを独占したがるが、寝ついてからはやっと由貴さんと2人だけの時間になる。お互いにスポーツが好きなので会話は絶えない。

以前は真剣に別居や離婚を考えていた由貴さんだが、今は少し吹っ切れている。次男が小さいので悩む暇もなく怒涛のような毎日を過ごしている、とも言える。

「大変な家に来ちゃったな、という気持ちはあります。でも、あのまま結婚しなかったら今でも一人暮らしだっただろうし、それはそれで悩みや後悔はあったはずです」

12年前に最愛の婚約者を亡くした由貴さん。その強烈な経験から自分の生活を時には俯瞰して見られるようになったのだと思う。すると、大変さの中にも喜びがあることに気づけるのかもしれない。

20年後、3人の子どもたちが巣立ったとき、由貴さんと和弘さんは何をしているのだろうか。いろいろあったけれど何とか乗り越えてきた戦友として、学生時代からの共通の趣味である自然の中で仲良く遊んでいればいい、と思う。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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