「狂ったアメリカ」は無限に世界を振り回す 「トランプ現象が腑に落ちる」500年の建国史

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しかし、彼らの前に、実は数千人に上るイングランド人が、「黄金郷(エルドラド)」を夢見てアメリカに上陸していた。16世紀末から17世紀初頭のことだ。一部の好事家らが、また聞き、あるいはまた聞きのまた聞きで、「土地の色」「先住民の話」として、金銀、エメラルド、トルコ石がアメリカの東海岸にあると報告し、金採掘者を何度も送り込んでいた。こうして、金のない「ゴールドラッシュ」が起きてしまった。

まさに、現代の「フェイクニュース」の生成過程と、その結末を見るような話である。

ピルグリム・ファーザーズの正体

さらに、その後に来たピルグリムは、ヨーロッパでのプロテスタント弾圧に苦しんだ人々である。アメリカを、信仰的にこの世にはあってはならない「天国」「理想郷」と信じて、海を越えた。つまり、最初の入植者らは、広大な未開の土地に「ゴールド」や「天国」というありもしないフェイクニュースを信じて、上陸している。

これが、トランプのツイートなど事実として正しくないことを熱心に信じるようになった始まりだという。「トランプ政権の『ポスト真実』『もう1つの真実』は(中略)アメリカ史全体を通じて(実際にはアメリカ史が始まる前から)受け継がれて来た意識や傾向から当然導き出される結果なのである」(同書)

アメリカ人はそもそも、さまざまな形の幻想や夢を追い求める人々だった。そういう思考や習慣、信念、行動が何世紀にもわたって積み重なった。直近の50年間には、メディアやインターネットの発達で、それが増幅した。

今となっては「ほかの先進国に暮らす10億〜20億の人々よりもはるかに強く、超常現象や奇跡、この世における悪魔の存在を信じている」(同書)という。無理もない。そうでなければ、アメリカ人の先祖は、スタートを切れなかったという歴史を背負うのだ。

理性的と思える人が、むしろ少数派かもしれないと思うデータも示されている。

著者カート・アンダーセンの調査によると、アメリカ人で「車や工場から排出される二酸化炭素が地球温暖化の主な原因だと、ある程度確信を持って信じているのは、国民の3分の1」「テレパシーや幽霊をまるで信じていない人も3分の1」という。これで、トランプや共和党上院議員のほとんどが、「地球温暖化は作り話」と思っているというのも、大手テレビ局が平気で超常現象についての番組を組んだりするのも説明できる。

こうした事実ではないことを信じているのは、「トランピスト」や保守派ばかりではない。高所得・高学歴でリベラル派、つまり2016年大統領選挙でヒラリー・クリントンに投票した人々も、ファンタジーランドの住人を構成している。

例えば、「ワクチンを接種すると自閉症になる」と信じるアメリカ人が、4分の1にも上るという。私が住むニューヨークで、百日咳で学校閉鎖があるのを不思議に思っていたが、これではっきりとした。高学歴の両親が、子どもにワクチン接種を受けさせないからだ。

また、科学者の88%が安全としている遺伝子組み換え(GMO)食品は、高学歴のミレニアルに毛嫌いされている。オシャレなスーパーマーケットには、ノーGMOのコーナーさえあり、若者が真剣な表情でラベルを点検している。

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