自動運転車がハッキングされたらどうなるか 「ロボット研究」のスペシャリストが徹底解説

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ここでの争点は主に、ハッキング行為への対策と、プライバシーに関するデータ保護の2つである。

ハッキング行為への対策がなければ、前述したコネクテッドカーの危険性に伴って事故が起こりうる。また、データ保護が行われなければ、昨今の米フェイスブック社を取り巻くような情報漏洩の問題が、自動車を介して再び起こる可能性が大である。

実際、ドイツでの自動運転車の公道通行に関する法改正では、通常の交通規則、損害補償義務、罰則及び過料規定、運転適性登録、車両登録、運転免許登録に加え、新たに自動車のデータ処理についても規制項目が加わった[9]。

近い将来の展望

自動運転やカーシェアリングなどのMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は今後一層、私たちの生活における利便性を向上してくれるだろう[10]。5G通信の商用化が始まれば、より大容量の通信によって自動車の可能性は飛躍的に向上する。

近い将来、私たちが自動車の購入を検討する際には、エアバッグが付いているのか? 盗難防止装置が付いているのか?ということを気にするのと同時に、セキュリティー対策されているのか? プライバシーは守られるのか?ということを気にしなくてはならない時代になるだろう。

むしろ、タイヤやハンドルのように、付いていて当然のことであり、もはや気にすることさえしないかもしれない。そして、これらのことはネットワークの利活用なくして実現は不可能なことである。そこにはハッキングによる脅威といった新たなリスクや各種法規制への対応など、自動車メーカーが考慮すべきことは多岐にわたる。

あらゆるものが協調する世界において、特定領域の専門家が単独ですべての問題を解決していけるような世界ではない。ところが、これらの状況に対し、日本政府が迅速かつ適切に対応できるかどうか、どうも心もとない。

想定される未来が訪れてから議論していては遅い。今これに目を通している読者を含め、国民的な議論を交わすべき時が来ている。

参考情報
[1]国土交通省自動車局「自動運転車の安全技術ガイドライン」(2018年9月)
[2]経済産業省自動走行ビジネス検討会「自動走行システムにおけるサイバーセキュリティ対策」(2018年3月)
[3]警察庁「自動車盗難等の発生状況について」(2018年6月)
[4]富士経済の報告「コネクテッドカーの世界市場を調査」(2018年2月)
[5]産経ニュース「ハッキングで「ジープ・チェロキー」遠隔操作」(2015年8月2日付)
[6]Wired「HACKERS REMOTELY KILL A JEEP ON THE HIGHWAY—WITH ME IN IT」(2015年7月21日付)
[7]国土交通省「自動で車線変更を行う自動ハンドル操作に関する国際基準が新たに成立!
[8]「ISO/SAE 21434 Cybersecurity Engineering Proposal
[9]国立国会図書館「ドイツにおける自動運転車の公道通行―第 8 次道路交通法改正―」(2018年3月)
[10]国土交通政策研究所長・露木伸宏「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)について」(2018年)
本連載は、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)による研究開発領域「人と情報のエコシステム」に協力を仰いだ。同プロジェクトの詳細は下記リンクを参照のこと。
RISTEX「人と情報のエコシステム」
浅田 稔 大阪大学大学院教授
あさだ みのる / Minoru Asada

大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻教授。1977年大阪大学基礎工学部制御工学科卒業。1982年大阪大学大学院基礎工学研究科後期課程修了、工学博士。1989年大阪大学工学部助教授。1995年大阪大学工学部教授を経て、1997年から現職。

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