川重のデザイナー、アニメの新幹線を「設計」 鉄道のリアルを追求、映画『未来のミライ』

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その亀田氏がデザインしたのが、未来の東京駅に出てくる「黒い新幹線」だ。著者の横で見ていた娘が小さな声で「乗っちゃダメ、その電車に乗っちゃダメだよ、くんちゃん!」と映画に向かってつぶやいていた「ひとりぼっちの国」行きの、恐ろしくも魅力的な黒い新幹線である。

亀田氏の「黒い新幹線」を見てみたい、どんなものが飛び出してくるのか、そんな気持ちから「黒い新幹線」というキーワード以外にはあまり具体的に伝えずにお願いしてみた。そしてデザインの第1案が出てきた。

毛が生えた牙のある新幹線のデザインは川崎重工業の本物の新幹線デザイナーの手によるもの©2018 CHIZU

いかにもプロっぽいグラフィカルな黒い新幹線という齋藤氏の予想は見事に覆された。目の前にあるのは、毛がはえていて牙のある獣(けもの)のような新幹線。驚く齋藤氏らを前に亀田氏の熱い語りが始まった。

「生態新幹線っていうコンセプトにしてみました。実はいま機械と生命がいかに融合していくかということにとても興味があるんです」

斉藤氏は思った。「アニメーションに登場する新幹線だから奇抜なものにしよう、そんな安直な発想じゃ、こんなぶっとんだデザインは出てこない。作品の本質を読み取ったクリエイターのイメージを直球でぶつけられて、僕らはもう驚きと感動しかありませんでした」

未来にはどんな新幹線が走っているのか?

1回目の打ち合わせでデザインはほぼ決まった。このデザインに、新幹線が走るために何が必要か正しい新幹線としての構造を実装していく。こうして映画『未来のミライ』の世界を形作る、本物のデザイナーが手がけた“本物”の新幹線が出来上がったのである。

未来の東京駅とはどんなイメージ?©2018 CHIZU

黒い新幹線だけではなく、未来の東京駅の中を走る未来の新幹線も川崎重工業の車両カンパニーに所属するデザイナーの方々にデザインしてもらった。この未来の新幹線は今、実際走っている新幹線が何十年、何百年かしたあとの未来に、現在の延長線上としての進化を遂げたら、どんな新幹線になるのかということをデザインしてほしいとリクエストしたそうだ。黒い新幹線とはまた違った、子どもたちの夢を実現した未来の新幹線である。最終的に2案の新幹線が劇中で採用され、どちらも空想が詰まっていながらも、電車としてきちんと成立している「本物」だ。

ここまで聞いても『未来のミライ』に登場する鉄道についての質問は尽きない。「未来をつかさどる駅はどうして東京駅だったのだろう」そんな疑問にも齋藤氏は答えてくれた。

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