川重のデザイナー、アニメの新幹線を「設計」 鉄道のリアルを追求、映画『未来のミライ』
細田守監督の新作映画『未来のミライ』を娘と一緒に観に行った。そのみずみずしく疾走感がある世界にどっぷり浸りながらも、映画を観ている間、絶えず気になっていることがあった。それは、全編に渡って延々と「鉄道」および「列車」が登場していることである。
試しに、娘にせがまれて買ったノベライズ版『未来のミライ』(角川つばさ文庫)を読み、「鉄道」「列車」「駅舎」が出てくるページすべてに付箋を貼り数えてみたところ、その数、286ページ中60ページ強もあったのである。つまりは少なくとも5ページに1回は「鉄道」が出てくるという計算になる。
まずは主人公である4歳のくんちゃんは、多くの場面で電車のおもちゃを手にしている新幹線が大好きな男の子である。そのくんちゃんに妹が生まれたところから物語はスタートする。ちなみにくんちゃんが妹の名前を決める際、真っ先に挙げた名前は「のぞみ」だった。
細田監督は鉄道ファン?
くんちゃんが鉄道好きというだけでなく、映画の中での時間の経過を感じさせるシーンや、重要な変化がある要所要所で列車、線路、駅が大きな役割を持って登場する。
なぜ、映画『未来のミライ』は、これほどまでに「鉄道」で満ちあふれているのだろうか。その理由を知るべく、監督・細田守氏が所属する「スタジオ地図」の代表であり、細田作品すべてのプロデュースも務める齋藤優一郎氏を訪ねた。
まず最初に、そしてストレートに聞いた。細田守監督は「鉄道ファン」なのか。
齋藤氏は答えてくれた。「細田さんとはかれこれ15年の付き合いになりますが、本人がとりわけ鉄道好きだったというのはないように思います」
想像とは違う答えが帰ってきて落胆する筆者に、笑いながら齋藤氏は教えてくれた。
「とはいえ、細田さんの人生の中で、鉄道と親密に絡んでいる部分が2つあると思うんです。まずひとつは亡くなった細田さんのお父様が富山の私鉄の職員をされていて、小さな頃から少なからず身近なところに鉄道が入り込んでいたこと。そして……」
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