川重のデザイナー、アニメの新幹線を「設計」 鉄道のリアルを追求、映画『未来のミライ』

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齋藤氏は続ける。「これが大きいと思うのですが、『未来のミライ』の着想のきっかけである、細田さんの息子さんが大の鉄道好きなんです」

スタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサー(写真:梅谷秀司)

細田監督自らが、息子さんに読み聞かせをしている本も、正確な列車の呼び名や路線が出てくる本格的なものが多いそうだ。さらに息子さんにリクエストされて黒部のトロッコ列車を見に行くなど、一緒に「鉄道」の魅力に触れているうちに、細田監督自身が後天的に「鉄道」が気になるようになってしまったようだという。

ここで、細田守監督の作風を振り返ってみよう。細田監督は、自身の体験や身の回りに起こった出来事をモチーフに映画を作ることで知られている。長男が生まれたことをきっかけに発想し作ったのが、前作『バケモノの子』だ。

そして、自分と同じ一人っ子であったはずの長男に、妹が生まれたことによりいや応なしに「お兄ちゃん」にならざるをえなくなって「ああ、この子は自分とは違う人生を歩み始めたんだな」という感慨から生まれたのが『未来のミライ』だという。

「だからこそ、というのでしょうか。『未来のミライ』のチャレンジのひとつに、子どもが見ている世界を描く、ということがありました」

子どもにとっての鉄道とは?

大人になるということは、社会的な生き物になるということ。世の中の仕組みがわかってくるし、目の前のことに心を奪われて風景が素通りしていってしまうこともあるのではないか。

「でも」と齋藤氏は力強く言う。「子どもが見ている世界というのは、もっともっとみずみずしくてバイタリティーと生命力に満ちあふれているのではないかと思うんです。それは電車も同じ、です」

ミライちゃんの回りにもたくさんの鉄道のおもちゃが©2018 CHIZU

大人からしてみたら、電車は単なる移動手段としか思わない人もいるだろう。でも、子どもにとって「電車」は自分が知らない世界へ連れて行ってくれて、たくさんの人に出会わせてくれる、そんな普段とは違う体験ができる存在なのではないだろうか。

「くんちゃん」の部屋は大量の電車のおもちゃであふれている。時に「片付けなさい!」と親から怒られたり、時に部屋中に広げて遊んでいたり、時に妹のミライちゃんのベビーベッドの中にあやしたつもりか敷き詰めたり、という具合に。

その点について聞いてみると齋藤氏はこう答えてくれた。

「主人公のくんちゃんがあれだけ線路をいっぱいつなぎ合わせていくっていうのは、世界の端っこや、世界の果てみたいなものを見たいと考えているんじゃないかと思うんですよ。子どもがしゃがみこんで電車を動かすと、目線も低くなることもあって、世界が広く、大きく見えるのではないか。子どもたちのそういう視線と好奇心が電車のおもちゃをつなぎ続けさせる気がするんです。そんな世界をみんなで見てみたかった」

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