高速バスの「乗り継ぎ」が今後欠かせないワケ 同業者への連結や鉄道への乗り換えが進む

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高速バスが四通八達している九州では、すでに長崎方面と熊本・大分・宮崎方面を行き来するバス利用者のために、九州道・大分道・長崎道が交わる鳥栖ジャンクションに近い基山PAに設けられたバス停で、福岡市まで行かずにバスを乗り継げるようになっていて、今回の社会実験もそれをモデルにしたものである。

長野から成田空港へは、時間を優先すれば北陸新幹線とJRの特急「成田エクスプレス」か京成電鉄の「スカイライナー」を乗り継ぐのがベターだが、費用を安くすることを主眼にすれば、バスという選択肢も出てくる。

これまでにも利用者の利便性を高めようと、交通機関同士の連携を図る試みは行われてきた。今から6年前に、阪急電鉄の京都線に新たな駅が誕生した。京都府長岡京市の西山天王山駅である。「天王山」は、戦国ファンには豊臣秀吉と明智光秀軍が激突して天下の趨勢が決まった「天王山の戦い(山崎の戦い)」を、高速道路に詳しい方には、上下合わせて8車線という日本の高速道路では最も車線が多い「天王山トンネル」を想起させることだろう。

阪急の駅に直結するエレベーターを上がると、高速バス乗り場にスムーズに行ける(著者撮影)

この駅の開業とほぼ同時に、駅をまたぐようにして京都縦貫自動車道が開通、駅の真上に高速バスの停留所が設けられて、阪急電車とバス停留所がエレベーターで直結された。

実際に駅を降りると、上下に分かれた高速バス停への表示が大きく出ているし、本数の多い関東・東海方面の乗り場の手前には専用の待合室も設けられている。

長岡京市では、この駅とバス停を市の交通の結節点と位置づけ、バス停もNEXCOではなく市が直接管理して利便性を高め、現在、1日70便あまりのバスがこの停留所から関東・中部・北陸・北近畿・中国地方へと行き来している。

鉄道とバスを「直結」する試み

市の担当者に、鉄道とバスを乗り継ぐのは、市民というよりは主に阪急沿線の他地域の乗客であるはずなのに、なぜこの鉄道とバスの直結に力を入れているのか尋ねたところ、「確かに以前アンケートを取った際には、利用者の8割は市外の人であった。しかし、利用者が増えてバス路線も増えれば、市民にとっても京都駅まで出ずとも各地にダイレクトで行けるようになり、その利便性で定住人口や交流人口を増やせる」という答えが返ってきた。

実際、市では駅前に市民が利用できる駐車場を整備し、高速バス利用者は駐車料金を割り引くなどのパーク・アンド・ライド施策にも力を入れている。

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