高速バスの「乗り継ぎ」が今後欠かせないワケ 同業者への連結や鉄道への乗り換えが進む

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関西ではすでに、JR神戸線の舞子駅が明石海峡大橋の本州側の真下に位置することから、ここにバス停「高速舞子」を設け、淡路島や四国へのバスの乗換駅として一定の機能を果たしているが、ここでも鉄道とバスを有機的に結びつけて、公共交通の利便性を高めているのが見て取れる。

始発から終点まで乗り通すイメージが強い高速バスが、別の会社のバス同士やバスと鉄道をつなぐことにより、利用者を増やせる可能性があることは、高速バスの新たな役割といってよいだろう。

ほかにも、都心方面への高速道路が、特に休日の夕方に渋滞して到着時間が読めなくなることから、途中のバス停で定時性がバスに比べて高い鉄道に乗り換えを促すことにより、利便性を高める施策も考えられている。

鉄道との連携を模索

たとえば、中央道上り線小仏トンネルの慢性的な休日夕方の渋滞を避けるために、トンネルの山梨県寄りにある藤野PAにバス停を設け、最寄りのJR中央線の藤野駅から東京方面に向かってもらおうというアイデアも検討されているが、こちらは渋滞がこのPAを越えてさらに西へ延びるケ-スが多いことや、藤野PAの敷地が狭く、バスが停車する場所を確保しづらいという理由で、まだ実現に向けた施策は進んでいない。

これもすでに常磐道で茨城方面から都心へ向かう高速バスが首都高速道路の渋滞で到着時間が読みづらいために、つくばエクスプレスへの乗り換え客の便宜を図って八潮PAに停車するなどの先例があるが、こうしたサービスは今後より検討されていくことだろう。

高速バスを取り巻く環境は決してバラ色ではなく、近年では長距離夜行高速バスの撤退が相次いでいる。関西と宮崎を結ぶ唯一の夜行高速バス「ひなたライナー」も、2019年2月末をもって廃止することが発表されている。LCC(格安航空会社)の伸長による需要の低迷や乗務員不足などが背景にあるが、こうした逆風の中、高速バスの利便性を高める施策が功を奏するかどうか注視したい。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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