日韓関係がここまで急悪化している根本理由 アメリカや韓国政府はどう思っているのか

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別々の問題である一方で、徴用工や慰安婦問題をめぐる日本の怒りやいらだちが、安全保障面での日本の反応に影響を及ぼしていることにはほぼ疑いがない。「さまざまな状況で何らかの改善がみられない場合でも、日本が韓国に対して辛辣に対応するとは思わない」とボサック氏は言う。

「一方で、日本が文政権に対してこれ以上働きかける努力を一切やめることを選択すると見ています。今回のP-1機事件は譲れない一線のようなものになっており、それが、日本側が厳しい態度を取り続ける理由なのだ」

アメリカが介入する可能性はあるのか

韓国人の中にはこれらの件の対処について、特に韓国の安全保障に及ぼすその影響について文政権を批判し、アメリカに2国間を取り持つよう介入を求める声もある。

「日韓関係の悪化で日韓米3国協定が弱体化する懸念がある」とする記事を、保守系日刊紙『朝鮮日報』が先ごろ掲載した。「米朝非核化会議が失速したままの状況で、悪化する日韓関係が、朝鮮半島有事の際に素早く実行に移す必要のある『ミサイル防衛協定』といった日韓米の対応姿勢に問題を引き起こす可能性があると観測筋は指摘している」。

朝鮮日報はアメリカが慰安婦協定の仲介で果たした役割を指摘し、「日韓慰安婦協定は、実際には日韓米協定であり、トランプ政権と議会が安倍首相に署名するよう圧力をかけて作り上げたのだ」と、元国立外交院長の尹德敏氏は紙面で述べた。「同盟国を重要視したオバマ政権は日韓関係を、アメリカにとっての戦略的要素と考えていたが、トランプ政権は、日韓関係と日米関係とを分けて見ている」。

過去のアメリカ政府も、北東アジアの2つの重要な同盟国間の論争に介入するのに、つねに消極的ではあったが、しかし同盟体制を維持するには、時としてその種のリーダーシップを必要とするのだということも理解していた。

しかし、今回筆者が足元の危機に対してアメリカの高官たちにその対応を尋ねたところ、その答えを得ることはできなかった。現在の危機に際して明らかに行動を起こそうとしないトランプ政権の態度は、世界におけるアメリカのリーダーシップを放棄した結果を改めて示している。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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