「4代目プリウス」は一体、何がズレていたのか 一部改良で変わったのは外観だけじゃない

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まず燃費にこだわりすぎた。前述のとおり、ユーザーはそれだけにこだわっているわけではない。もちろん燃費はよければよいほどいいが、そのためにリアシートが狭いとか、騒音や振動が小さくないとか、そういうものはもはや望んでいなかった。TNGAの分、走りは底上げされていたけれど、その味わわせ方への配慮は足りていなかったと言っていい。

デザインもそう。大事なのはちょっといい買い物に見えること、プリウスらしく見えることなのに、お絵描きのようなグラフィックスで奇抜なデザインにしてしまったのだから、受け入れられるはずがなかった。もはやプリウスが先進層のクルマではなく、むしろ(実際はともかく)多少は余裕があると自負している保守層のクルマになっていたことに、もっと意識的であってもよかったはずだ。

しっかりプリウスらしく見えるデザインへ

今回のマイナーチェンジで、新型プリウスはそのあたりを補正してきたように見える。まず、誰が見ても「何だコレ?」とは思わせない、そしてしっかりプリウスらしく見えるデザイン。さらに、先進層のニーズに応えるコネクテッド機能や先進安全装備も用意された。従来は、こうした要素を求める層をプリウスPHVで吸収しようと考えていたが、期待したほどユーザーを集められなかったこともあり、プリウスでそこに対応してきたようだ。

一方、驚いたことに、これら標準装備の充実により新型プリウスのカタログ燃費数値は、マイナーチェンジ前より悪化している。最も低燃費の“E”で、JC08モード燃費は39.0km/hにとどまるのである。

これが英断であることは説明の必要はないだろう。ユーザーが求めていたのは、まさにこういうプリウスだったのではないだろうか。実際に出るわけではないカタログ燃費の40km/hという数値より、適度に先進感あり、質の高いクルマという……。

これだけで簡単にセールスが上向きになるのかどうかはわからない。おそらく急浮上ということはないだろうが、しかし今まで拒絶していたような人も、新型は「まあ、いいんじゃない」と思わせそうではある。

気になるのは、プリウスPHVのポジショニングの再定義だが、それは取りあえずこのあとの話。まずはトヨタがこのプリウスを、商品の変化に合わせて売り方までしっかり修正してこれるかどうかに注目したい。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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