岐阜大の学部再編、「白紙説」も飛び交う迷走

地域科学部の廃止をめぐり学内外から猛反発

将来的な学部統廃合の可能性については、森脇学長が「今回は管理部門の統合であって、大学と学部については現在のまま」だと述べた。ただし、そこで言う「現在」とは、法人統合スタート時点の話のはずだ。

両者の発言からは、法人統合前に学内で解決すべき問題だという思いがにじむ。批判がくすぶったまま山積する事務調整を進めたところで、統合後に問題が大きくなって噴出する可能性もある。

基本合意では、両大学の強みを生かして「東海研究クラスター」を形成するという構想も示された。目玉は「糖鎖生命コア研究拠点」。糖鎖はグルコースやガラクトースなどの糖が細胞表面上で鎖状につながった分子で、がんやアルツハイマーなどの神経機能にも関わり、その解明が新たな創薬につながると期待されている。

名大に研究の蓄積はあるが、岐阜大も近年、新研究分野として力を入れており、法人統合の象徴として共通の拠点を置く方針だ。ほかにも農学や航空宇宙、医療情報データの統合などでノーベル賞学者を輩出する「世界水準」型の名大と、「地域貢献」型の岐阜大のよさを合わせていく狙いだ。

地域科学部は中途半端な状態?

一方、文系分野では、社会人の学び直しを促す「リカレント教育」や語学、数理データサイエンスを取り入れた「次世代型高等教育」などの共通化が挙げられている。両大学にある教育学部に主眼を置いたメニューと言えるだろう。こうした組み合わせの中で「文理融合」を掲げていた岐阜大の地域科学部は、ユニークなだけに宙ぶらりんという状態にも見える。

それを逆手にとって存在意義を発揮できるのか。もし廃止となれば、せっかく掲げた「地域」の看板も降ろさざるをえなくなる。それは今後、法人統合を考えるほかの地方大学にとっては懸念材料となりかねない。

「東海国立大学機構」には現時点で他に参加大学はないという。名大の松尾総長は「まず両大学で成功例を示し、他に加わりたいという大学があれば、まったく拒まない」と強調した。

ただし、「これが失敗すれば、後に続くところはないだろう」とも。こうした危機感とスピード感を意識するあまり、トップダウンでものごとが進みすぎているきらいもある。「無関係」とは言えない学部再編などの議論に、もっと学生や地域を呼び込んでいいのではないだろうか。

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