ところが50代でも稼ぐ以外の目的で、兼業する人も増えてきました。それは自分の立場にささやかな不満を感じている人。それなり稼げているのに、それだけでは物足りないと感じている。また、社会に貢献している実感を得たいので、本業以外の役割を探し、NPOに関わる選択をした人たちです。ちなみに厚生労働省の資料によると、年収別でみても1000万円を超える人で、大きくシェアが伸びつつあります。
今後は年収が1000万円を超える人材は兼業でNPOに所属する……というトレンドがやってくる可能性が高いのではないかと考えます。その理由は、ここまで書いてきたように相思相愛の関係だから。NPO法人が組織として規模を拡大するなかで、事業会社の経営や組織マネジメントの経験者が求められる状況になりつつあります。
事業会社の幹部人材は自分自身の社会に対する貢献実感のある環境を探しています。ところが、NPOが報酬を支払えるだけの財力が十分のあるわけではありません。そこで事業会社で稼ぎながら、時間の許す限り手伝う=兼業としての関わりがちょうどいい関係となるのです。
たとえば、NPO法人クロスフィールズはNTTドコモやリクルートマーケティングパートナーズらと社会問題解決に取り組むプログラムを開始。イノベーションを生み出すための新たな視座を得る機会であると、経営幹部層の果敢な参加で成果が生まれつつあるようです。
会社が兼業を推奨するメリット
各自の自主的な判断によるNPOとの兼業が、会社にとってメリットがあると判断され、取り組みを支援する環境が整備されると、さらなる加速が起きることでしょう。
筆者自身、兼業の奨励は会社にとってメリットになると考えます。別の職場環境で得られる体験や人脈は本業でも成長機会をもたらすからです。自身も前職時代に、同世代で別の会社で勤務している仲間と社会貢献の団体を立ち上げたことがありました。そこで取り組んだ組織づくりは大企業では体験できない苦労の連続。本業におけるマネジメント力の向上に大きく寄与したと記憶しています。現在においてもNPOに関わり、社会貢献に取り組んでいる人たちに本業に通じるプラス面を聞いてみると
・コミュニケーション力が高まった
・新たなビジネスを見つける機会になっている
などいくつも回答が返ってきました。ただ、現状では兼業を禁止している企業は過半数を超えます。また、禁止されていなくても「兼業する余裕があるなら仕事に集中すべき」という雰囲気の職場が大半ではないでしょうか。
ただし、働き方改革の加速などにより長時間労働が緩和され、会社員各自に新たな時間が創出されつつあります。その時間をどのように使うかという観点からも、社会貢献に関わる組織を兼業することは有意義な機会になるはずです。
いっそのこと、会社側がある程度強力な施策を行ってもいいのかもしれません。冒頭のD部長の会社も兼業を奨励して、実行させるために部長職以上にはNPOなどの外部団体での活動を半ば義務化したことで定着していったとのこと。兼業を奨励する、会社として勇気ある施策を打ち出すべきかもしれません。
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