「高輪ゲートウェイ駅」は果たして定着するか 物議を醸す新駅名、感情で論じるべきでない

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東急田園都市線は、東急が開発した多摩田園都市への、今で言うアクセス路線として建設された。溝の口―長津田間の開業は1966年だ。沿線は元より無人地帯であるはずがなく、農村が散在しており地名が当然あった。だがニュータウン開発に伴い、多くが「現代風」に改められている。そもそも田園都市線という路線名自体、人工的なものだ。

たまプラーザ駅は「元石川」という名称であったら、今日、どうなっていただろうか(筆者撮影)

代表的な例がたまプラーザ駅で、建設中の仮称は地元の地名(横浜市港北区元石川町)に基づいた「元石川」。それであるのに、多摩田園都市の中核と位置づけられ、多摩をひらがな書きにして、スペイン語で広場を意味する「プラーザ」がつけられた。52年前の話である。今や沿線住民には親しまれ、日々にぎわいを見せている。

このように、新しく生まれる、あるいは根本的に大きく生まれ変わる町に建設される鉄道や駅には、外来語を含めた新しい路線名や駅名を名付けたほうが、気分も改まり、新しくやってくる住民にもなじみやすいのではないかと考えられる。古くは、農村にビール工場だけがポツンとできた場所へ設けられ、ビールのブランド名をつけた、恵比寿駅(1901年に貨物駅として開業)もその一つか。

「カタカナ」がふさわしい場合もある

埋め立て地や再開発地域、ニュータウンには、外来語も用いた名称が目新しさからもふさわしいという考えには一理ある。首都圏を見渡してみても、東京テレポートや品川シーサイドは埋め立て地の駅だし、柏の葉キャンパスや越谷レイクタウンは再開発、ニュータウンエリアだ。漢字の部分は近隣の地名、自治体名である。

新駅「高輪ゲートウェイ」を設置するエリアはかつて海や鉄道用地であり、住民がいたことはない(撮影:尾形文繁)

ちなみに高輪ゲートウェイ駅は高輪地区にはない。江戸時代は海であったところで、明治以降はずっと車両基地などの鉄道用地。部外者は立ち入れなかったエリアで、これまで住民は1人もいなかった。

客観的にわかりやすく、かつ主観的に親しみやすい駅名をつけることは、意外に難しい一面がある。感覚的な好き嫌いだけで論じるわけにはいかないと考えている。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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