「高輪ゲートウェイ駅」は果たして定着するか 物議を醸す新駅名、感情で論じるべきでない
地名に基づく駅名、路線名も同様である。つまりは、土地の個性、アイデンティティーを表す名称として、守っていく必要もまたあるのではないだろうか。前述のように同名や類似した名称は避けるとしても、可能な限り伝統的な地名を盛り込むのがセオリーと言えそうだ。再開発などで新たにできた町であっても、一部に既存の地名が入っていると、やはり親しまれやすいのだろう。
東武の「スカイツリーライン」が、案外すんなりなじまれているのも、東京スカイツリーという、唯一無二の有名建造物に路線名が拠っているためだと考えられる。
正式名称は伊勢崎線のままだが、伊勢崎は路線の終点である群馬県の市名であり、東京近郊の利用客にはなじみが薄いこともある。東北新幹線全線開業前は700km以上もの路線延長があった東北本線のうち、上野―宇都宮間に、JR東日本は「宇都宮線」と愛称をつけ、これも同様に定着している。
名称は駅や路線の「機能」を表す
路線や駅には「役割」がある。渋谷駅が繁華街・渋谷への下車駅であることは、誰もが理解できる。
単に、ほかの駅と区別するためだけなら、「TY01」や「F16」といった「駅ナンバリング」だけでも十分で、旧共産圏の国には似たような例があったそうだ。だが駅名をつけることで、その駅が持つ機能が明らかになる。
路線名も同じことで、湘南と新宿を結ぶから「湘南新宿ライン」、埼玉と東京を結ぶから「埼京線」と明白だ。前述の宇都宮線も好例だろう。いずれも固有の地名と結び付いているからほかとの区別もできるし、機能を的確に表しているから、利用客も素直に理解できる。
反対に地名と結び付いていない、言い換えれば、全国のいずれの駅、路線へ名付けたとしてもおかしくはない名称は、機能を表していないから適切ではないということになる。
東武の「アーバンパークライン」は野田線につけられた愛称であるが、評判が芳しくない理由がこれ。仮に、東武野田線以外の路線につけたとしても、大都市近郊で緑地や公園の多い路線であるならば、不適切ではない。野田線だからこそ、千葉県野田市を通る路線と利用客に理解できるのだ。
「東京さくらトラム」も同じ。都電は荒川線1路線しかないとはいえ、同じ都内には、「トラム」と呼んでも差し支えない東急世田谷線がある。
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