「リーマンショック世代」の先輩はなぜ怖い? 2008&09年入社の人を集め理由を探ってみた
――その後の社内の雰囲気はどうなってしまうのでしょう……?
石垣さん:昨日まで新卒の僕をかわいがってくれていた大人たちが急変して、リストラを推進する側とそうでない社員の間で空気がすごく悪くなりました。お互いに目も合わせないし悪口を言い合っていて。大人たちの恐ろしい内紛を目の当たりにしましたね。その後約半年経って僕は子会社に転籍したんですけど、100人くらいいるキレイなオフィスから、10人くらいの寒くてトイレが臭いオフィスに移って、物理的にも環境は大きく変わりました。
入社後のしんどかった出来事は?
――2009年入社のお2人は社会人のスタートから景気が最悪だったと思いますが、入社後のしんどかった出来事について教えてください。
深川さん:周りがどんどん辞めていきました。毎週退職者がいて、隣で優しく教えてくれた先輩が1週間後にはいない。それが当たり前の日常だったから、「会社ってこんなものなのかな?」と思っていたけれど、今考えたらおぞましい状況だったと思います。
上野さん:僕はマナー研修が無駄につらかったですね。例年の業者ではなく、僕らの時だけ軍隊式だったんです。話をするときに目をそらしたり、荷物の置き方が悪かったりすると、いちいち怒鳴られる。めちゃめちゃ厳しくて、研修中はずっと責められていました。しかも配属後に「体育会系のマナー研修を受けた新卒が社風に合わない」って言われて、「あの時間は一体何だったんだ!」っていう(笑)。
――どうして上野さんの年だけ、そんな厳しいマナー研修に変更になったんですか?
上野さん:新卒に対する社内の目が厳しい中で、人事としては厳しく育てていることを示したかったみたいです。コスト削減のために派遣社員や業務委託の人を切っている時に、戦力にならない新卒が入ってくるわけじゃないですか。既存社員からすると「なぜ内定を切らなかったのか」って話なんですよね。
深川さん:当時は景気が悪くて、多くの会社が人を切っていましたよね。私はそんな中で、求人広告の新規営業をやっていたんです。人件費を削ってどうにか生き延びようとしている会社に対して、「採用しませんか?」ってアプローチをする日々は、かなりつらかった。「誰にも必要とされない、世の中に何の貢献もしていない無価値な仕事だ……」と感じてしまっていましたね。
――周りの人はどんどん辞めるし、仕事のやりがいも見いだせない。すごくキツい状況だと思うんですけど、深川さんはどうして辞めなかったんですか?
深川さん:個人的な意見ですけど、同期が続々と辞めていくのを見て、ダサいと思ったことが大きかったですね。「こんな仕事がしたかったわけじゃない」みたいなことを言うんですよ。半年もやってないのに、なんで分かったようなことを言ってるんだろうって。それに、3年は頑張るって自分で決めていたから、つらいから辞めるっていうのは違う気もしました。つらいという理由で辞めることを、自分の中で正当化できなかったんです。
――上野さんと石垣さんはいかがですか?
上野さん:仕事が面白かったから続けられたと思います。僕は編集希望だったんですけど、実際の配属はWebサイトの改善を行う部署で。最初は「何それ?」って思ったけど、やってみたら案外向いていたんです。まぁ、偶然ですけどね。