マック復活の仕掛け人が語る「逆境の仕事術」 MBAよりもビジネスに必要なこととは?

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足立氏自身、「どんな付加価値を提供できるか」また「自分が成長できるか」に興味があるため、すでに人気があり、確立された会社にはあまり行く理由がないという。

「若い人が『ブランド』として、人気のある会社に行きたい気持ちもなんとなく理解できます。でも、人気のある会社に在籍しているのと、自分に実力がつくのとは、まったく別の話です。どうせなら、すでに人気がある会社に行ってすでに確立したブランドにタダ乗りするのではなく、無名の会社を人気企業にすることに貢献したほうが、面白いし、自分の実力もつきますよね」

働くことの価値観には2つある

「働くことに対する価値観として、自分が『個人』として世間で通用するようになるのと、1つの会社でずっと着実に仕事をこなす、という2つの価値観がありますが、僕自身は前者をずっと心がけてきました。いまこの瞬間、想定外の天変地異が起こりうるわけです。日本企業だと思って入社した会社が、いきなり外資系になったりする時代です。

足立 光(あだち ひかる)/元日本マクドナルド・マーケティング本部長/上席執行役員。1968年アメリカテキサス州生まれ。一橋大学商学部卒業。P&Gジャパンマーケティング部に入社、その後ブーズ・アレン・ハミルトンやローランド・ベルガーなどのドイツの名門企業を経てワールド 執行役員 国際本部長。2015年から日本マクドナルドにてマーケティング本部長としてV字回復を牽引、2018年6月退任。その後はアジア・パシフィック プロダクトマーケティング シニア・ディレクターとして、ナイアンティック参画。ローランド・ベルガーのエグゼクティブ アドバイザー、スマートニュースのマーケティング アドバイザーも兼任。2016年「Web人賞」受賞。翻訳書に『マーケティング・ゲーム』『P&Gウェイ』(ともに東洋経済新報社)等。オンラインサロン「無双塾」主催。(撮影:山本創)

30年安定してサラリーマン生活を送れるところって、そんなにないんですね。であれば、人気企業に行くという考え方ではなくて、何かあっていきなり会社から放り出されてもいいよう、自分が個人として成長できる会社を選ぶべき、という話なんです」

現在、隆盛を誇るGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などのIT企業も、将来にわたって安泰とはいえないと言う。「アマゾンのジェフ・ベゾスも、数十年後にはアマゾンは存在していないかもって発言しているくらいですから、現在好調のこういう会社が20年後にどうなるかは、誰も予想できません」。

足立氏の会社選びの大前提は「自分が成長できるところ」、結果として「人気がないところ」「大変なところ」だが、そうした組織、部署に飛び込んで、社内の雰囲気から仕事のやり方、業績まで変えていくのは並大抵のことではない。当然、給料も前職より下がることがほとんどだ。

「給料で会社を選びたくなるのも理解できますが、それだけで選んでしまうと、会社にしがみつく人になってしまい、成長の機会が失われます。特に20代、30代は短期的に給料を上げることよりも、自分の成長や経験値を優先することが大切です。ドラクエと一緒で、大変な場所でないと自分の経験値って上がらないんです。僕自身、これまで6回の転職で3回給料が下がっていますが、結果的になんとかなっています」

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