「100年に1度の自動車革命」という煽りの正体 CASEやMaaSのブームに惑わされるな

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そうした中、ダイムラーがCASE啓蒙を始めたのだから「ウチも出遅れないように」というのが、トヨタを含めて日系自動車メーカーの基本的な考え方だ。こうした「ドイツ信仰」や「ドイツ警戒」の流れは、いまも昔も大きく変わっていない。

さらに、最近は米GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)や、中国BAT (バイドゥ・アリババ・テンセント)といった海外IT大手が、画像認識技術による自動運転EVやビッグデータによる物流管理ビジネスを強化する動きを活発化。自動車メーカー各社は「敵はITにあり」とばかりに、これまでとは違う相手との本格的な闘いを前に武者震いしているように見える。

MaaSは公共交通再編に限定されていない

拙著『クルマをディーラーで買わなくなる日』でも詳しく解説しているが、自動運転、EV、コネクテッド、シェアリングといった新しい技術・サービス領域へ自動車界やIT産業界からの注目が集まる中、CASEと同じく、最近の業界流行語になっているのがMaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)という表現だ。

トヨタをはじめ、世界の自動車メーカー各社の幹部は「弊社の事業は、これまでのオートモーティブ(またはオートモービル)からモビリティへの転換が急務だ」と口を揃えるように語る。自動車を単なるハードウエアとしてではなく、移動全体をモビリティというサービス業態ととらえて、新しい事業領域を確立させるというのだ。

だが、現実的にはMaaSの社会実装では、公共交通の再編が主題となっている。

MaaSという表現は、北欧フィンランドの国策のひとつである、交通関連アプリサービス「MaaSグローバル」によって世界的に知られるようになった。筆者は2018年3月、経済産業省の委託事業として、フィンランドの中央官庁、ヘルシンキ市警察、またMaaSグローバル社などの視察オブザーバーとして参加し、フィンランドにおけるMaaS事業の実態を詳しく見た。そのうえで言えるのは、フィンランド政府の言うMaaSという概念が日本にそのまま適合することはなく、日本では独自の公共交通再編の議論が必要だと考える。

また、MaaSの議論に自動車メーカーが加わるケースは稀だ。なぜならば、MaaSの前に、自動車メーカーは着手するべき大きな課題があるからだ。

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