欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップ

これから日本にも「同じこと」が起きる

本書の描き出す欧州の現状は、先ごろ改正入管法を国会で可決し、外国人労働者の大量受け入れを決めた日本にとってもひとごとではない。本書を読むと、移民の大規模受け入れに至った欧州の状況は、現在や近い将来の日本によく似ているのではないかと感じざるをえない。

たとえば、欧州諸国の移民大量受け入れを推進した者たちの論拠は次のようなものだった。「移民受け入れは経済成長にプラスである」「少子高齢化社会では受け入れるしかない」「社会の多様性(ダイバーシティ)が増すのでいい」「グローバル化が進む以上、移民は不可避であり、止められない」。

本書の第3章で著者は、これらの論拠について1つひとつ証拠を挙げながら反駁(はんばく)し、どれも説得力のないものだと示す。

だが、欧州の指導者たちは、1つが論駁(ろんばく)されそうになると別の論拠に乗り換え、一般庶民の懸念を巧みに逸らし、移民受け入れを進めてきた。

同じことが日本でも起こる

この4つの論拠は外国人労働者や移民の受け入れ推進の主張として、日本でもよく耳にするものである。日本でも今後、推進派の政治家や学者、評論家、マスコミは、おそらく、これらの論拠を適当に乗り換えつつ、実質的な移民受け入れを進めていくのではないだろうか。

そのほかの点でも、本書が描き出す欧州の過去の状況をたどっていくと、今後の日本の外国人労働者や移民受け入れの議論がどのように展開するか、大まかな予測が可能ではないだろうか。

次のようなものだ。

1:学者やマスコミは、「政治的な正しさ」(ポリティカル・コレクトネス)に過敏になり、移民受け入れに肯定的な見解や調査結果は積極的に報道する一方、否定的なものは、「報道しない自由」を行使し、大衆の耳に入りにくくする(たとえば、「移民受け入れは財政的に大きなマイナスだ」という研究結果は報道されない)。
2:同様に移民の犯罪についても、「人種差別だ」というレッテル貼りを恐れて、警察もマスコミもあまりはっきりと犯人の社会的属性や事件の背景などを発表しなくなる。
3:「ドイツのための選択肢」(AfD)といったいわゆるポピュリスト政党の躍進など移民受け入れを懸念する動きが一般国民の間に広がった場合、マスコミや政治家は、その第一の原因としての従来の移民受け入れ政策の是非をきちんと吟味することはせず、懸念を表明する人々のほうばかりに目を向け、ことごとく「極右」「排外主義」「人種差別」などと攻撃する。つまり、「問題そのものではなく、問題が引き起こす症状のほうを攻撃する」ようになる。
4:こうしたことが続く結果、政治家や大手メディア関係者といったエリート層と一般国民の間の意識のズレがますます大きくなり、国民の分断が生じてしまう。

西欧諸国に比べて、ハンガリーなどの東欧諸国は、近年、移民受け入れに対し断固たる抑制策をとることが多い。著者はこの相違に関して、過去の植民地主義や第2次大戦中のナチズムなどのために西欧諸国は、欧州の文化に対して自信を失い、贖罪意識を持っていると指摘する。自文化への自信の喪失や贖罪意識が、移民受け入れ政策を方向転換することができない理由の1つとなっているというのである。

自文化への自信の喪失や歴史的な贖罪意識という点でも、西欧諸国と日本は似ている。

改正入管法をめぐる日本の国会審議は、欧州の失敗例をほとんど分析せずに終わってしまった。手遅れになる前に、本書『西洋の自死』を多くの日本人が読み、欧州の現状や苦悩を知り、日本の行く末について現実感をもって考えてほしいと思う。

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